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タイセイ飼料株式会社

酪農コラム/粉ミルクの選定

みなさん、こんにちは。
今回は密接な関係である粉ミルクの選定と哺乳プランの策定を2回に分けて掲載いたします。

現在各社から様々な粉ミルクが販売されており、私自身もすべての銘柄を把握しきれていません。そんな中から皆さんはどのような粉ミルクを使用していますか?
また、その粉ミルクに決めた理由は何でしょうか?
私が一番大事にしている事は、哺乳期間中の健康な発育はもとより、牛の生涯の中で最初に訪れる一大イベントの離乳をスムーズに乗り越える事になります。
そのためには、使用する粉ミルクと量や期間を決める哺乳プランの二つが重要であると考えています。

カーフゲート(以下、CG)が設定している目標は、8週(56日齢)で離乳し、離乳時点でのスターター摂取量2.5kg以上、DG0.8以上としています。出生時体重43~44kgのホル雌が2カ月後に体重が2倍になっているぐらいの設定です。
上記目標達成のためには、下痢・肺炎対策、ワクチネーション等の様々な飼養管理方法も関与しますが、哺乳期管理のベースになる今回の2点に絞ってのお話になります。

~ 粉ミルクの選定について ~
まず粉ミルク選定時の前置きとしてお伝えしたいのは粉ミルクの溶解性についてです。現在販売中の粉ミルクは製造方法の違い、形状・質感の違いはありますが、どのメーカーの物であっても溶解性は気にする程の違いがあるとは思いません。(哺乳ロボット向き、手混ぜ向きはありますが、)私たち使用者が粉ミルクのハンドリング(使いかけの物を湿度の高い場所に何日も保管する、必要以上に哺乳ロボットに補充する、溶解時の温度が高すぎる又は低すぎる、規定以上の希釈倍率にする等)を間違わなければ大丈夫です。
以下、粉ミルクの紙袋に記載されている表示票の項目で選定時のポイントにしている所をご紹介します。

① 成分量
・粗タンパク質(以下、CP)
一般的にはCPレベルが高いほど、体高の伸び・筋肉量の増加を望めますが、私は免疫機能でもかなり重要な働きを期待しています。CGでは疾病(下痢・肺炎)罹患時の発熱の様子も体格と併せて判断基準にしています。CP供給量が低いと疾病時に微熱の仔牛が増え、投薬効果の反応も悪くなると感じています。CP供給量が充足している仔牛はギュンと40℃ぐらいの発熱を呈し投薬後スッと熱が下がり治療日数も微熱の仔牛より短縮します。また、高CP供給飼養であるほど胸腺の発育が良く疾病に対する抵抗性が上がります。虚弱仔牛用に別添で給与できるA飼料(アミノ酸製剤)もありますが、ベースのCP供給量が重要です。
ちなみに、私の基準は7~9倍希釈のものであればCP26%以上のものを粉体で1日750g以上給与です。飼養環境、品種によって変わってくると思いますので目安程度にして下さい。

・粗脂肪・TDN
銘柄の希釈倍率によってかなり数字の違いがありますが、この2つの供給量でほぼ仔牛の増体量が決まってきます。まず確認して頂きたい事は、ご自身が設定している哺乳量で出生時より仔牛が痩せていっていないかです。1ヵ月齢までの仔牛はミルクからのエネルギーだけで増体させなければならないと思ってCGでは管理しています。過度にスターターからのエネルギーを期待してはいけません。(1ヵ月齢まで)42~43kgの体重だと生乳であれば5ℓ、TDN110の粉ミルクでは700~800g程度が痩せさせないための1日必要量の目安です。(季節が春・秋の場合)元々体力(体脂肪)がない仔牛をダイエットさせてしまうと免疫力が低下しますし病気にも罹りやすくなります。これは我々人間と同じですし、生まれたばかりの赤ちゃんを意図的にダイエットさせることはしないと思います。大げさかもしれませんが、1ヵ月齢までの仔牛は100%ミルクからのエネルギーに依存していると思って管理する事が、疾病減少への近道になるはずです。TDNの私の基準は夏110%、春秋112%、冬114%のものを粉体で700~800gです。冬期は寒冷対策(ジャケット、赤外線ヒーター、ジェットヒーター等)を講じての数字になりますのでご注意下さい。

② 原材料名等
・動物質性飼料
脱脂粉乳、濃縮ホエーたん白、乾燥ホエーが主ですが、動物質性飼料の割合が最低でも70%以上の銘柄を選びます。私の経験だと割合が70%を下回ってくると下痢(特に消化不良性の下痢)が増加します。可能な限り割合の高い銘柄を使用したいものですが、それに伴い価格も高くなってしまう傾向があります。

・植物性油かす類(使用していない場合もあります)
私は小麦グルテン酵素分解物、酵素分解脱皮大豆かすを極力使用していない銘柄を選びます。仮に使用していても5%未満であれば他の成分や原材料を考慮して選ぶ場合もありますが、割合が高い程下痢を発症しやすい感覚を持っています。

・その他の原材料
主に注目するのは使用している油脂です。植物性油脂または動物性油脂がありますが、どちらも一長一短がありどちらが良いと言い切れませんが、油脂の種類を変更しただけで良くなった農家さんもいましたので興味のある方は試してみる価値はあります。油脂の他には生菌剤等の様々な原料・成分が配合されていて各社特色を出していますが、A飼料で市販されている製品で代替、追加できる物も多いのでこれらは特にこだわりを持って選ぶ事はしていません。

以上、今回は粉ミルクの紙袋に記載されている表示票等について書かせて頂きましたが、長年CGで様々な粉ミルクの試験、独自粉ミルクの開発にも挑戦させて頂いており、これらの知識と経験が皆様のお役に立てたのであれば幸いです。是非とも表示票を再確認して頂き、ご自身が目指す仔牛と管理方法にあった粉ミルクを選定して下さい。次回は哺乳プラン策定についてのお話です。