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タイセイ飼料株式会社

獣医コラム/肢蹄病の原因と予防(14)- 蹄の病気について

 これまでのコラムの中で『蹄葉炎(ていようえん)』という言葉を掲載した事がありました。酪農/畜産関係者の皆様であれば、『蹄葉炎で足が痛い』、『蹄葉炎でツメが変形する』などという言葉を耳にした事があると思います。蹄葉炎は生産性を下げると言われていますが、どのような病態なのでしょうか?

––– 蹄葉炎(Laminitis)とは? –––
 蹄葉炎を理解するためには、まず『蹄葉』という組織を理解する必要があります。蹄葉とは蹄壁と蹄真皮の間にある組織で、ジャバラに組織が重なった構造をしています。

獣医コラム/肢蹄病の原因と予防(14)- 蹄の病気について

 蹄葉にはいくつかの役割があり、以下が代表的な役割と考えられています。

 ・蹄壁への血液供給
 ・蹄壁と蹄真皮を結びつける
 ・衝撃の緩和(=クッション性UP)

 衝撃の緩和については、蹄球枕(デジタルクッションとも言われます)の方が有名ですが、蹄葉にもクッション性があり、蹄へのダメージを減らしています。前述した様に、蹄葉はジャバラに組織が重なった構造をしており、そのジャバラな組織がサスペンションのようにスライドする形で衝撃を吸収しています(重なったトタン屋根がスライドするようなイメージを持ってもらえると分かりやすいと思います)。

 では、蹄葉炎になるとなぜ痛みを生じるのでしょうか?

 蹄葉は蹄壁と蹄真皮を結びつける構造と前述しました。蹄葉炎になると蹄壁と蹄真皮を結びつける力が弱くなり、蹄壁と蹄真皮が剥がれて痛みが生じます。人に置き換えると、ツメが剥がれる事と同義ですから、とても強い痛みが生じるのは明らかです。ホルスタインであれば700〜800kgの体重なので、ツメが剥がれている状態で体重を支えるのは、非常に痛々しいですね…

獣医コラム/肢蹄病の原因と予防(14)- 蹄の病気について

 では、蹄葉炎の原因はどのようなものがあるのでしょうか?代表的な原因は以下あると言われています。

 ①ルーメンアシドーシス
 ②乳房炎や子宮炎などの感染症
 ③分娩や肥満などによる代謝性変化

 ①ルーメンアシドーシスとは、ルーメン(第一胃)内のpHが低下する事を意味します(=第一胃内が酸性化すること)。ルーメンのpHが低下する時間が長くなると、ルーメン内の微生物が死滅し毒素を排出します。この毒素が引き金となりヒスタミンという物質を誘引 → 蹄葉にダメージを与え蹄葉炎になってしまうのです。
 ②乳房炎や子宮炎などの感染症による蹄葉炎も原因は①同様で、細菌が排出する毒素がヒスタミンを誘引 → 蹄葉にダメージを与え蹄葉炎になります。
 ③に関しては古くから言われてきましたが、分娩後に搾乳用の飼料に切り替わったり、肥満によるホルモンバランスの変化/疾病にも影響を受けるため、①や②と重なる要因もあると推察されます。

 以前、同じ牛を数ヶ月間観察していたところ、観察途中でたまたま乳房炎によりショック症状が出てしまいました。治療の末、なんとか立ち直る事ができ畜主と喜んでいたのですが、10日ほど経過した後、急に足が痛くなったと相談を受けました。この時は4本全ての足に痛みがあり、典型的な蹄葉炎となっていました(前述した原因の②)。

 このように蹄葉炎は個体で起こる事例がある一方で、群で起こる事例があります。群で起きている場合には、マネージメントや飼料に何らかの課題がある可能性もあります。もし、蹄葉炎を疑うような牛群がある場合には、現場で起こっている事を実際に確認してみると、課題点が見つかるかもしれません。


(文責:牧野 康太郎)

― 参考資料―
① Laminitis – Prevention, Diagnosis and Treatment
② Histopathology of Oligofructose-Induced Acute Laminitis in Heifers
③ PATHOGENESIS OF LAMINITIS IN DAIRY COWS