トピックス

北海道十勝地方における飼料の専門会社。安全、安心な飼料ご提供を第一に、畜産家の皆様や消費者の皆様のご要望にお応えします。

  1. home

会社案内

タイセイ飼料株式会社

獣医/機能性飼料素材 (5)

––– 酵母壁系吸着剤 –––
 鉱物系以外の吸着剤として代表的なものに、酵母細胞壁(Yeast Cell Wall)が挙げられます。酵母や細菌の細胞壁には鉱物系吸着剤と同じく微細な孔構造があり、ここに毒素が物理的に入り込むことで吸着されると考えられています(1)。さらに詳細に見ていくと、毒素は細胞壁を構成しているタンパク質や多糖類と、水素結合やイオン反応、疎水性反応など、様々なメカニズムで結合して吸着されています(2)。これらの反応は一部の有用細菌(例:乳酸菌)の細胞壁でも同様に起こり、一部の毒素に対しては酵母細胞壁よりも高い吸着効果を示した報告もあります(3)。

 以上の特徴は酵母細胞壁の物理的・化学的な特性として現れています。つまり、生きた酵母による生物学的な作用によって毒素を吸着・分解・不活化しているわけではなく、死んだ後の酵母でもその細胞壁成分そのものが有用に働くことを示しています(3)。生きている状態の酵母が生菌剤として広く利用されていることは以前のコラムでもご紹介しましたが(http://www.taiseishiryo.jp/tp_detail.php?id=104)、微生物として死んだ後や死菌の状態でも酵母は家畜の健康維持において有効であることがわかります。

 なお、生菌と死菌の違いに関しては、生菌よりもむしろ死菌においてより多くのカビ毒素を吸着したとする報告が複数あり(3、4)、加熱処理をすることで吸着効果が増大することもわかっています(4)。以上の結果は、細胞が死んだり加熱処理をすることで細胞壁が細かくバラバラになり、表面積が増加した結果、吸着効果を高めることに繋がっていると考えられています。

–––毒素以外への吸着作用 –––
 以上のように、酵母細胞壁を構成しているタンパク質(マンノプロテイン)や多糖類(βグルカン、マンナンオリゴ糖)はその物理的・化学的特性から、毒素以外とも結合することがわかっています。代表的なものでは大腸菌やサルモネラなどを吸着することが知られていますが(5-7)、特にサルモネラは発生した時の被害の大きさから、養牛業界では誰もがコントロールしたいと思う病原性細菌だと思います。そのコントロール方法の一つとして、酵母細胞壁を含む吸着剤は有効な選択肢になります。

––– 吸着効果以外の機能 –––
 酵母細胞壁には免疫刺激効果があると言われています。正確なメカニズムはまだよく分かっていないのですが、酵母細胞壁の構成成分であるβグルカンが免疫細胞を刺激し、一例としてはマクロファージや好中球の機能が高まります(8)。
 さらに、抗酸化作用についての報告もあり(9、10)、酵母細胞壁成分の投与によって酸化的組織損傷が低下した可能性も示唆されています(10)。

 以上のように、酵母壁系吸着剤は毒素吸着の効果だけではなく、広く家畜の健康維持に効果があると思われます。

獣医/機能性飼料素材 (5)

― 参考資料―

(1) François Y. et al., Use of atomic force microscopy (AFM) to explore cell wall properties and response to stress in the yeast Saccharomyces cerevisiae. Curr Genet. 2013, 59(4):187-96.
(2) Huwig A. et al. Mycotoxin detoxication of animal feed by different adsorbents. Toxicology Letters. 2001, 122(2):179-88.
(3) Tabari D. et al., In Vitro Binding Potentials of Bentonite, Yeast Cell Wall and Lactic Acid Bacteria for Aflatoxin B1 and Ochratoxin A. The Iranian Journal of Toxicology. 2018, 12(2): 7-13.
(4) Shetty PH. Et al., Surface binding of aflatoxin B 1 by Saccharomyces cerevisiae strains with potential decontaminating abilities in indigenous fermented foods. Int J Food Microbiol 2007, 113(1):41-6.
(5) Takalloo Z. et al., Binding efficacy and prebiotic properties of commercial yeast cell walls toward aflatoxins and pathogenic E. coli and Salmonella spp. ANIMAL NUTRITION AND FEED TECHNOLOGY. 2023, 23(2):205-220.
(6) Ganner A. et al., Quantitative evaluation of E. coli F4 and Salmonella Typhimurium binding capacity of yeast derivatives. AMB Express. 2013, 3(1):62.
(7) Griffin S. et al., Production and characterisation of yeast cell wall preparations with binding activity against Salmonella and Escherichia coli. Maynooth University Research Archive Library. 2015.
(8) Williams DL. et al., Glucan-based macrophage stimulators. Clin. Immunother. 1996, 5:392–399.
(9) Babincová M. et al., Carboxymethylated glucan inhibits lipid peroxidation in liposomes. Z Naturforsch C J Biosci. 1999, 54(12): 1084–1088.
(10) Kogan G. et al., Antioxidant properties of yeast (1→3)-β-d-glucan studied by electron paramagnetic resonance spectroscopy and its activity in the adjuvant arthritis. Carbohydr. Polym. 2005, 61(1):18–28.