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タイセイ飼料株式会社

酪農/吸収不良性下痢、クリプトスポリジウム症下痢の対処方法

~ 吸収不良性下痢、クリプトスポリジウム症下痢の対処方法 ~
 クリプトスポリジウム症下痢は一度発症してしまうと、なかなか治らないものと皆さんも認識しておられると思います。
 原虫であるクリプトスポリジウムには効果のある抗生剤がないのが難治性下痢と言われる所以です。基本的には対処療法メインで治癒を目指しますが、発見の遅れや不手際が症状を一気に重篤化させますので非常に厄介な下痢であると言えます。

- 治療方法 –
 主要症状は水溶性下痢で40℃を越えるような発熱は単独感染では稀です。
 抗生剤治療は大腸菌や呼吸器病の二次感染を抑える目的で使用し、発熱がなくても活力が低下ぎみであれば解熱鎮痛剤(フォーベット、メタカム、ネオアス等)を投与すると早期の回復が見込めます。体調改善という点では抗生剤より解熱鎮痛剤の方が効果を見込め、特にメロキシカム製剤(メタカム等)が下痢時の仔牛には最適だと思います。

- 経口補液剤(電解質) –
 クリプトスポリジウムのような吸収不良性下痢の時には繊維質やオオバコ末の入った経口補液剤をメインで使用します。(お湯に溶かすとドロッとするタイプ)
 腸管の吸収能力が低下している所にポカリスウェット的な経口補液剤を給与しても通過時間が早く、十分な量を吸収できず脱水症状の改善には至りませんし、逆に吸収できなかった水分が排出され便性状の悪化を招きます。
 ドロッとする経口補液剤は物理的に便をしめる作用もありますが、腸管の中をゆっくり通過する事で、吸収能力の低下した腸管でも十分に水分を吸収する時間を確保できます。

- 断乳 –
 カーフゲートでの断乳と経口補液剤の給与方法は以下の表になります。

酪農/吸収不良性下痢、クリプトスポリジウム症下痢の対処方法

- 回復期 –
 経口補液剤の給与によって脱水が改善し哺乳欲や活力が戻ってきてもクリプトスポリジウムによって受けた腸管へのダメージが回復するまでは泥状軟便が続きます。
 この期間中は再発防止のための樹皮熱処理抽出製剤(ネッカリッチ)、ミルクの消化吸収を助ける消化酵素(ビオペア)、腸のターンオーバーを促進するグルタミン製剤(バリウム)などを使用しながら腸管の回復を待ちます。

- おわりに –
 私は出生後の仔牛すべてがクリプトスポリジウムを保菌しているものと考えていて、カーフゲートでは集荷当日の朝哺乳でニュートリトップ(オオバコ末入り)の給与を農家さんにお願いしています。健康な仔牛にも予防的に給与する事で腸管内のクリプトスポリジウムを減少させて発症を予防する事が出来ますので、一般の農家さんでも発症しやすい日齢の2,3日前に予防的に給与する事で確実にクリプトスポリジウム症下痢を減らすことが出来ると思います。
 環境中のクリプトスポリジウムをゼロにするには大変な衛生管理労力と高度な牛舎洗浄が求められ、仮に実行しても発症をゼロに抑える事には限界があると思いますので、一般的な衛生管理にオオバコ末入り経口補液剤での予防も考えてみてはいかがでしょうか。

次回はロタウイルスの下痢についてです。