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タイセイ飼料株式会社

酪農/搾乳設定の応用事例~経産牛編~

前回までは、Lelyの搾乳ロボットにおけるKPIや設定に関する見方を紹介しました。
今回からは、ノーサンファームが実際に取り組んだ、搾乳ロボットを用いた試験結果をいくつか紹介したいと思います。

その前に、皆さんは搾乳ロボットを使用するメリットは?と問われたら何を思い浮かべますか?
私が考えるメリットは人間側と牛側の2つの側面があると思っています。
・人間側のメリット:搾乳作業からの解放による労働負担や人員削減
・牛側のメリット:自由に行動できる
牛が自由に行動できることで、ストレス軽減や搾乳回数が増加する傾向があります。
※1日に複数回搾乳することを、多回搾乳又は頻回搾乳と言います。

多回搾乳については、様々な研究がされており、ある論文では(F. Soberonら、2011)分娩後3週間まで4回/日搾乳を行った後、2回/日搾乳をした牛vs全乳期を通して2回/日搾乳をした牛を比較すると、7ヶ月間で日乳量が2.2±0.4㎏増加したと報告されています。

酪農/搾乳設定の応用事例~経産牛編~

そこで、ノーサンファームでも搾乳ロボットの搾乳設定の変更(増加)により、搾乳回数と日乳量は増加するのかを飼育している全ての経産牛を対象に調査しました。
搾乳設定変更前の1ヶ月間(変更前)と搾乳設定変更後5ヶ月間(変更後)とで比較してみました。

変更前後の搾乳設定は、画像の通りです。

酪農/搾乳設定の応用事例~経産牛編~

変更前
・分娩後30日~乾乳前29日までの牛の場合、
「最大搾乳回数3.0回」「期待乳量8.0㎏」「最低搾乳回数2.0回」
・乾乳前28日~乾乳日までの牛の場合、
「最大搾乳回数3.0回」「期待乳量8.0回」「最低搾乳回数2.0回」
・乾乳前28日以降の牛の場合
「最大搾乳回数2.0回」「期待乳量8.0回」「最低搾乳回数2.0回」

変更後
・分娩後40日までの牛の場合、
「最大搾乳回数5.0回」「期待乳量7.0㎏」「最低搾乳回数4.0回」
・分娩後41日~乾乳前31日の牛の場合、
「最大搾乳回数4.0回」「期待乳量8.0㎏」「最低搾乳回数2.0回」
・乾乳前30日以降の牛の場合
「最大搾乳回数2.0回」「期待乳量9.0㎏」「最低搾乳回数2.0回」
と設定しました

そもそも、搾乳ロボットの搾乳設定は、
「最大搾乳回数」「期待乳量」「最低搾乳回数」から決まっています。

・最大搾乳回数
1日に搾乳できる回数の条件を示しています。
変更後の分娩後40日までの場合を見ると、最大1日5回まで搾乳が可能ということになります。

・期待乳量
ロボットに訪問した時点で搾れる乳量を推測した指標になります。
例えば、24㎏の日乳量の牛の場合、24㎏÷24h=1㎏/hのスピードで搾乳量が増加する計算となるため、変更後の分娩後40日までの場合を見ると、最後の搾乳から7時間経過した後に搾乳ロボットへ訪問すると搾乳が可能になります。

・最低搾乳回数
時間で搾乳間隔をコントロールする指標になります。
変更後の搾乳設定に注目してみると、分娩後40日までの場合は、最低搾乳回数が4.0回となっています。これは24h÷4回=6h/回となります。つまり、最後の搾乳から6時間経過すると搾乳ロボットで搾乳が可能になるという設定になっています。

これらの条件のうち、「期待乳量」or「最低搾乳回数」の基準をクリアしている牛が搾乳ロボットへ訪問した場合に搾乳を開始し、基準に満たない場合や最大搾乳回数が上限に達した牛はそのままリフューズします。

調査の結果、搾乳設定の変更を実施したことで、平均搾乳回数は変更前と変更後5ヶ月を比較すると、0.65(回/日・頭)増加しました。平均日乳量は変更前と変更後5ヶ月を比較すると、4.7(㎏/日・頭)の増加が確認されました。特に日乳量は、泌乳日数が浅い牛ほど多回搾乳により乳量の反応が大きく、変更前40㎏程度であった平均乳量が変更後5ヶ月では50㎏を超え、約10㎏の増加が確認されました。
泌乳前期に乳量が増加した牛は、変更後3ヶ月の泌乳中期以降になっても乳量が多い傾向にあり、最終的には、変更後5ヶ月の泌乳後期にでも変更前よりも乳量が多くなっていました。
乳成分は、乳量の増加に伴い乳脂肪率や乳蛋白率は低くなってしまいましたが、乳脂肪量(㎏)や乳蛋白質量(㎏)は増加する傾向が確認されました。

酪農/搾乳設定の応用事例~経産牛編~

多回搾乳は泌乳前期に実施した方が産乳成績を増大する効果が大きく、泌乳中期以降に多回搾乳を実施しても泌乳持続性の維持に寄与しますが、効果は低いとの報告があるので、泌乳前期にお試しください。
次回は、初産牛における搾乳回数に関するトライアルを紹介したいと思います!