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タイセイ飼料株式会社

獣医コラム/肢蹄病の原因と予防(20)- 肢蹄の病気について

 先月は牛の消化機能の概要について掲載しました。今月は、肢蹄病や生産性に関わる第一胃(ルーメン)について、さらに掘り下げていきたいと思います。第一胃について掘り下げるにあたり、餌との関係は切り離せません。ただ、飼料設計について詳しく掲載すると複雑な文章となるため、反芻を得られるかどうかという点にフォーカスして掲載していこうと思います。

––– 反芻とは? –––
 反芻とは牛が胃から口に餌を戻すことを意味します(噛み返しなどとも言われます)。牛が餌を食べていない時に口をモグモグさせている時が反芻ですが、口の中では以下のような作業が行われています。

 ①牛の奥歯(後臼歯)で餌を粉砕する
 ②反芻した餌と唾液を混ぜる

 第一胃には無数の微生物がおり、餌の消化に貢献しています。①により細かくなった餌は第一胃で微生物がアクセスしやすくなるため、餌が効率良く発酵/消化されていきます。

 餌が発酵される際には、酸性の化学物質が作られるので、第一胃のpHが酸性に傾きます(=pHが低下する)。第一胃のpHは6.2〜6.8が理想とされますが、発酵によりpHが低下し過ぎると、消化に関わる微生物の動きが悪くなり、餌の消化も悪くなります。
 
 この問題を解決するには、pHを理想とされる6.2以上に近づける必要があります。ここでキーポイントとなるのが②で登場した唾液です。唾液の中には、pHをアルカリ性に傾ける重炭酸イオン(≒ 重曹)やリン酸イオンが含まれます。牛の唾液1L中には重炭酸塩として8g前後、リン酸塩としては2g前後含まれます。唾液は1日で100〜200Lほど分泌されるため、重炭酸塩だけでも1〜1.5kgくらいは分泌される計算になります(牛は唾液から重曹1〜1.5kgに匹敵する量を分泌するということです。スゴイ!)。
 報告によっては1日の唾液に含まれる成分が重曹3kgに匹敵するという話もあるので、牛の体は本当にミラクルですね…

獣医コラム/肢蹄病の原因と予防(20)- 肢蹄の病気について

 では、牛に反芻をしてもらうには、どうすれば良いのでしょうか?

 牛の反芻は第一胃で餌が胃壁をチクチクと刺激することでスイッチが入ります。これはルーメンマットをいかに形成していくかということにもつながります。

獣医コラム/肢蹄病の原因と予防(20)- 肢蹄の病気について

 飼料設計においては、peNDF(物理的有効繊維)という指標がありますが、繊維の大きさを元に計算される指標で、第一胃以降へすぐに流れず、ルーメンマットを形成(=反芻を促進)する繊維のことを意味します。

 peNDFを確認しながら飼料設計することも重要ですが、数値上の指標ですので、最終的には餌や牛を見て、反芻しているかな?食べ切れているかな?乳量や乳成分はどうかな?糞はどうかな?などと総合的に判断する必要があると考えています。
 つまり、牛にインプットされた餌が、どのようにアウトプット(牛乳や糞)されたか考えるということです。

 来月以降に改めて掲載しますが、反芻による第一胃のpH適正化が肢蹄病のコントロールに非常に重要となってきます。もう少し第一胃に関しての基礎的な情報をまとめていきますので、それまでお付き合いいただければと思います。


(文責:牧野 康太郎)