獣医コラム/肢蹄病の原因と予防(21)- 肢蹄の病気について
コラム
先月のコラムには反芻の重要性について掲載しました。今月のコラムには給餌飼料ごとの第一胃性状と反芻の関係性について掲載していきたいと思います。
––– 給餌飼料と第一胃性状の関係性は? –––
牛の給餌形態には大きく分けてTMRと分離給与(牧草と濃厚飼料を別々に給与)がありますが、給餌される飼料の大きさにより、第一胃の性状が異なります。便宜上、以下の3パターンに分けて、給餌される飼料と第一胃の性状について解説していきます。
① 粗剛性が強い牧草主体のTMRや分離給与
② 適切な粗剛性を持つTMR
③ 繊維の粗剛性が弱いTMR
まず、①について解説します。粗剛性が強い飼料は強固なルーメンマットを形成しやすく、反芻を得られやすい第一胃内環境を作ることができます。
乾乳牛のTMRや粗飼料主体の分離給与に見られる給餌形態ですが、牛が強く反芻しているのを確認することができます。
次に②について解説します。こちらに関してもルーメンマットを形成しますが、ルーメンマットの硬さは①には及びません。それは、①よりも②の方がTMR中の繊維が少ない(=ゴツゴツしていない)ことに起因しています。
②一般的なTMRには1〜5cmほどの長さの繊維源が混ざっていますが、①の牧草主体の餌と比べるとゴツゴツした繊維が減っていることは想定しやすいと思います。このため、②の場合には、ルーメンマットが硬い繊維でミチミチに形成されているわけではなく、小さい繊維が粥状に集まって形成されています。
最後に③について解説します。繊維の粗剛性が弱いTMRに関しては、ルーメンマットが脆弱になり、反芻刺激が得られにくくなります。この場合には、反芻が起こりにくいため、第一胃のpHが低下しやすくなる(=ルーメンアシドーシス)と考えられます。
※反芻時に唾液から重曹などのアルカリ成分が分泌されるが、反芻不足になるとアルカリ成分が分泌されず、第一胃内が酸性化しやすくなるということ(2025.12月のコラムを参照)。
さて…
実は、図2(②)と図3(③)のTMRは同じ飼料設計です。両者を見比べてもらうと、③のTMRの繊維が縦に裂けて、ヒモ状になっているのがわかると思います。
このヒモ状の繊維は反芻刺激ができるくらい牛の胃をチクチク刺激するかというと、『NO』であると考えられます(裂けるチーズを裂かずに一本飲み込む場合と、ヒモ状に細かく裂いて飲み込む場合、どちらがお腹にたまるかという話です)。
この牧場さんでは、TMRを③→②のように是正することで、牛群が明らかに変わっていきました。私自身とても勉強になった事例ですが、来月のコラムに詳細を掲載していきたいと考えています。
(文責:牧野 康太郎)
