酪農/搾乳ロボットと乳房炎管理
コラム
今回は、搾乳ロボットでの乳房炎について掲載したいと思います。
乳房炎は生産性に関わる疾病で乳腺内に微生物や細菌が侵入・増殖し、毒素を出すことが原因と言われています。乳房炎は生産乳量や乳質の低下による経済的損失を招き、乳牛の職業病と例えられることもあります。
搾乳ロボットと乳房炎について過去の報告を少し調査してみました。
Z.Dengら(2020)によるとパーラーなどで搾乳する従来型の搾乳とロボット搾乳では、検出される乳房炎の原因菌の種類や薬剤耐性は同じくらいだったが、ロボット搾乳の牛の方が注射薬を使用した治療が多いと報告しています。
Karise Fernanda Nogaraら(2025)は、搾乳ロボットの種類によって少し異なるものの、ロボット搾乳を用いた飼養形態における、乳房炎の原因菌はStaphylococcus chromogenes(表皮ブドウ球菌)が最も多く検出されていましたが、次にStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌:SA)が多く検出されたと報告しています。
↑Z.Dengらより抜粋
↑Karise Fernanda Nogaraらより抜粋
SAは人の手やタオル、汚染された搾乳機器を介して伝染する「伝染性乳房炎」であり、発熱やブツの排出・乳房の腫脹など目に見える症状を示さない「潜在性乳房炎」になりやすいと言われています。
SAの特徴としては、乳房の深い所に存在する乳腺細胞まで侵入し、抗生剤などに対してバリア(バイオフィルム)を形成するため、感染から時間の経った個体は抗生剤が効きにくくなります。
搾乳ロボットの場合、24時間牛が好きなタイミングで搾乳できるため、牛群内にSAの保有牛がいた場合、搾乳機器を介してSAに感染するリスクが高まるのでは?と考えました。色々と調べてみると、国内でも搾乳ロボットを導入した酪農場でSAによる集団感染が発生した事例があるそうです。
搾乳ロボットは、搾乳後にスチーム洗浄がかかりますが、J. Rufら(2015)の調査では、搾乳後のスチーム洗浄の後にスワブ検査を実施すると、SAの陽性反応が認められたそうです。
搾乳ロボットを使用しているノーサンファームのバルク乳スクリーニング検査によるSAの検出状況は、2021年ではほとんどSAは検出されませんでしたが、2022年以降はバルク乳から検出されるようになりました。
バルク乳スクリーニング検査で3回連続SAが検出された場合、SA保有牛が存在すると考えられており、2022~2023年の推移を見ると2022年10月頃からバルク乳から常にSAが検出されており、牛群内にSAを保有している牛がいると考えられました。
ノーサンファームでは、2023年からどの個体が?どの菌による乳房炎なのか?を把握するため農場内で菌検査を実施する「オンファームカルチャー(OFC)」を導入しました。
すると、培地にSAが検出される牛がおり、以下のような対応を実施しました。
PCの情報から乳房炎の可能性がある牛を確認
→PLテスターで分房を特定→特定した分房の乳汁を採取
→菌検査→治療→菌検査→治療→菌検査→治らなかったら盲乳or淘汰対象
※菌検査と治療は個体にもよりますが、2~3クールを目途に盲乳or淘汰対象を検討。
この事例を通じて、搾乳ロボットの衛生状況によっては、従来の搾乳方法と同様に伝染性乳房炎が伝播する可能性があることを勉強しました。しかし、菌検査を実施することで、伝染性乳房炎の原因菌に感染した個体を特定し、SA乳房炎の適切な対処すれば、牛群内のSAを抑え込むことは可能だと思います。
PLテスターでのチェック後に菌培養するひと手間はありますが、乳房炎を管理する1つとしてOFCを取り入れてみるのはいかがでしょうか。
※参考文献
① Z.Deng,T.J.G.M.Lam,H.Hogeveen,M.Spaninks,N.Heij,M.Postema,T.vanWerven,and
G.koop.2020. Antimicrobial use and farmers’ attitude toward mastitis treatment on dairy farms with automatic or conventional milking systems.J.Dairy Sci.103:7302-7314
② Karise Fernanda Nagara,Marcos Busanello and Maity Zopollatto.2025.Relationship Between Subclinical Mastitis Occurrenceand Pathogen Prevalence in Two Different Automatic Milking Systems.Animal.15:776
③ J.Ruf,S.Johler,A.Merz,U.Stalder,M.Hässig.2015. Success of interventions in mastitis
problems with Staphylococcus aureus after the introduction of an automatic milking system.SchweizArchTierheillkd.157(3):153-6
