酪農コラム/炭水化物3~飼料の加工とデンプンの消化(最終回)
コラム
「炭水化物(3)飼料の加工とデンプンの消化」(全3回)の最終回です。
ポップ加工
これは食品のポップコーンとして一般的に良く知られている方法です。ポップ加工は水分のない釜でトウモロコシの実を加熱し、デンプンを包んでいるたんぱく質の膜を破裂させるため白いデンプンが外側に露出します。
ポップ加工により表面積が増えるため、カサが増えます。マイロの消化率を上げるためにポップ加工が用いられることがありますが、粉砕加工に比べて費用対効果がそれほど高くなく、加工法としてそれほど一般的ではありません。
ペレット加工:
ペレット加工は米国のピュリナ社(現在はカーギル社の一部)が1928年に考案しました。ペレット加工により、飼料が細かくて舞うことを抑え、取り扱いしやすくなり、嗜好性が上がり、嗜好性が良くない原料を配合しやすくなり、乾物摂取量が増加し、より良い成績が得られるようになります。
酪農場向けに販売されているペレットには様々なサイズ(2mm径~10mm径)とタイプがあります(図 )。配合する原料と給与する動物によって最適なペレットのサイズは異なります。一般的に、小さなペレット(2~4mm)は若い牛に、大きなペレット(4mm以上)は成熟した牛向けです。
現場での実例:
穀類の種類とフレーク加工の種類はデンプンの消化に影響を与え、適切な組み合わせによって動物の生産性は向上します。それでは、どのような穀類やフレーク加工を選ぶべきなのでしょうか。
フレークの種類はどっち?
厚いフレークを選ぶべきか、薄いフレークを選ぶべきかは動物の種類と給与方法によって異なります。
一般的に厚いフレークはゆっくりと消化されるため、穀類の給与割合が高い肉牛用として使われます。逆に、薄いフレークは高泌乳牛に向いています。高泌乳牛では消化管内を飼料が速く通過するため、厚いフレークではあまり消化されずに糞に出てエネルギーの無駄となり、家畜の生産性が低くなってしまうからです。
フレーク&ペレット vs フレーク&マッシュ?
加工方法の異なる飼料のどちらを選択するかについて、現場ではしばしば混乱と誤解が発生しています。この選択は動物の生産性に大きく影響します。
繋ぎ牛舎において、TMRではなく分離給与する場合には、取り扱いのしやすさと粉が舞わないことからフレーク&ペレット(F&P)タイプが一般的です。分離給与でフレーク&マッシュ(F&M)タイプの飼料を使用するのは私が見てきた中では非常に稀なケースです。多くの酪農家さんはF&Mタイプの飼料はTMRで使うものだと考えています。しかし、実験してみるとF&Mタイプの飼料はF&Pタイプの飼料よりも成績が良くなります。F&PタイプよりもF&Mタイプの方が動物の摂取スピードがゆっくりになるためです。
TMRではF&Mタイプが一般的ですが、多くの牧場においてF&Pタイプも見られます。ただし、ペレット加工により比重が重くなるため、完全に混合されず選び食いにつながることがあります。給与する粗飼料のうちコーンサイレージ、グラスサイレージの割合が高い牧場、水分の高い副産物の割合が高い牧場では、フレークを含まないオールマッシュタイプの飼料がおすすめです。輸入乾草を多く使用する場合にはTMRに加水して選び食いを避けるようにするべきです。F&MではなくF&Pタイプの使用を使用すると選び食いの傾向は強まります。TMR給与で代謝病が発生するケースを観察すると、適切な飼料加工方法が選択されていないことと選び食いが影響しています。
まとめ:
ご自分の牧場における過去の代謝病の発生を思い返し、適切な加工方法の飼料を使っていたかを検討してみてください。適切な加工方法の飼料に変えるだけのシンプルな変更で動物の健康と成績を改善できるかもしれません。
(「炭水化物(3)飼料の加工とデンプンの消化」おわり)