酪農コラム/視察などでよく質問される事について(2)
コラム

みなさんこんにちは。
今月のテーマは『哺乳期の乾草給与』についてです。
私が哺育育成に関して勉強を始めた2,000年代前半は、哺乳仔牛に乾草を給与しないというアメリカ流がトレンドでした。たしかに、幼齢期の仔牛には草を分解する酵素は少なく消化吸収力は低いため、より成長に繋がるスターター(配合飼料)を食べさせた方が効率的ですし、離乳にむけてルーメンを作るという点においてもスターターが勝っている事も乾草を給与しないというトレンドにつながっていたのだと思います。
しかし、現在では乾草を全く給与しない方のほうが少ないと思われます。むしろ、どのような草種を、どれくらいの日齢から、どれくらい給与しているのかをよく質問されますので、現在のカーフゲート(以下CG)の方法に至った経緯を交えながらご紹介致します。
① アメリカ流トレンドの実践と問題点
まず、乾草給与形態の従来型哺乳方法から乾草だけを取り除いた方法を実践しました。
たしかに、乾草がなくなった分、スターターの摂取量は少し増加しましたが、汚れた敷料(麦稈)を食べたり、他の牛を舐めたりといった行動の変化が見られました。十勝のような敷料に麦稈を使用する管理方法では、繊維源の供給は必要だと感じました。
② スターターの変更
次に行ったのは、スターターの摂取量を下げないで、必要最低限の繊維源を供給出来ないかを考え、ペレット&フレークタイプのスターターからアルファルファキューブスライス入りのバルキータイプに変更しました。スターターのTDNは少し下がりますが、スターターから繊維源の供給を試みました。結果としてはバッファー効果によって固め食いによる下痢は減少しましたが、離乳が近づくにつれて敷料を食べる牛が増えてしまいました。タンパク質の供給、バッファー効果の面では良かったですが、繊維源としての量は不十分でした。
③ 生後10日齢からの2番乾草ロールの給与
前述の①・②を経てスターターを元に戻し、生後10日齢から2番乾草ロールの給与に変更しました。スターター摂取量への影響を考慮し離乳2週間前までは制限給与、それ以降は飽食としました。スターター摂取量の抑制等、特に問題はなかったのですが幼齢牛ほどガムみたいに咀嚼し吐き捨ててしまうのが気になりました。そこで、吐き捨てと足元に引き込んでしまう事の対策としてロールベールカッターで20㎝に切断した乾草を給与することで問題はほぼ解消されました。しかし、切断して半日程時間が経つと嗜好性が落ちてしまう事と以前より肋の張りが小さくなってしまったので切断給与は取り止めました。
今回の結果で、離乳2週間前(CGでは生後40日齢前後)まで乾草給与は制限して大丈夫だと感じました。
④ 制限期間中に輸入乾牧草の給与
次にチモシー、クレイングラス、アルファルファといったものを試しました。
チモシー、クレイングラスは柔らかく仔牛は食べやすそうで結果も良好でしたが、価格や作業面であきらめました。アルファルファについては、他の草種に比べ高タンパクですのでフレーム作り(特に体高)に効果的ですが、過食によるガス張り(鼓脹症)、食餌性の下痢などが懸念されますし、硬い茎で口の中を切ってアクチ(コブ)になることも多々ありますのでお勧めしません。昔と違って現在はスターターのタンパクレベルも上がっていますし、高タンパク粉ミルクも各メーカー取り揃えていますので、アルファルファからのタンパク質供給にこだわる必要はないと思います。
⑤ 制限期間中にファイバースタート(FS)の給与
現在CGで使用しているFSは3㎝程に裁断したアルファルファをサイレージにしたものです。使用方法はいくつかあるのですが、CGでは乾草の代わりに単体で使用しています。短く裁断してあり引き込みロスもなく、発酵しているので嗜好性も良く柔らかいです。仔牛たちはペロペロ舐めるように食べて確実に体の中に取り込んでくれます。幼齢牛は食べられる量が限られているので、高栄養でガサの少ない繊維源を給与し、スターター摂取量を抑制させないことがスムーズな離乳に繋がります。
まとめ
現在のCGでは生後10日齢からり離乳2週間前までFSを制限給与(1日2回、残さない量を給与)し、以降は2番乾草ロール(柔らかければ、草種はTY、OG、RCGなど何でも可)を長いまま草架カゴで飽食させています。肋張りを出すために1番草を使用する方もおられると思いますが、仔牛にとっては硬すぎますし、2番草でも切断せずに給与すれば十分に肋張りを出せます。離乳が近づく頃には飽食に近い形で給与する事と前日の残った草は必ず撤去し、毎日新しい草を給与する事が日々の飼養管理ポイントになると思います。