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タイセイ飼料株式会社

酪農コラム /「炭水化物~繊維と乳牛の健康」(2)

「炭水化物~繊維と乳牛の健康」(全3回)の2回目です。

繊維と反芻動物


 反芻動物は文明が発生したころから、収穫物のうち人間が食べられない繊維部分を利用して人間に乳や肉や毛や労働を提供するという両面の恩恵から、家畜として選ばれてきました。反芻動物(ruminant)という言葉はラテン語で「何度も何度も噛む」という「ruminare」に由来しています。世界中の反芻動物は150種以上いて、様々なサイズ、形、色のものがいて、様々な気候下で暮らしています。150種のうち大部分は野生であり、肉、乳、羊毛、労役のため家畜化されているのは現在でもわずかな種に限られます。

酪農コラム /「炭水化物~繊維と乳牛の健康」(2)

 全ての反芻動物は複数の胃を持っていますが(第一胃=ルーメン/ミノ、第二胃=蜂巣胃、第三胃=葉胃、第四胃=皺胃/ギアラ)一部は3つの胃を持っています(第一胃と第二胃がつながったもの、第三胃、第四胃)。家畜化された反芻動物の中ではウシ、バッファロー、ヒツジ、ヤギ、シカ、カモシカが4つの胃を持ち、ラクダ、リャマ、アルパカ、ビクーニャは3つの胃を持っています。南米アマゾンの森林で見つかったツメバケイというキジの仲間の鳥はウシのルーメン発酵と同じシステムを持ち、繊維を非常に効率的に消化できることが判っています。解剖学的にはカバも3つの胃を持っていますが反芻はしません。

 家畜化された草食動物で反芻しないウマ、ロバ(、ブタも)の胃はひとつだけで、繊維の消化は進化の過程で盲腸が大きくなった後腸と呼ばれる部分で行われます。

 ヒトも動物も、デンプン中でグルコースがα結合している部分を消化管内で分泌する消化酵素で分解できますが、セルロース中でグルコースがβ結合している部分を分解することはできません。反芻動物の前胃(第一胃、第二胃、第三胃)と反芻しない動物の後腸(盲腸)にいる共生微生物(細菌とプロトゾア)はこのβ結合を分解することができます。

 ルーメンの発酵プロセスにおいて、微生物は炭水化物から揮発性脂肪酸を生成します(センイ(細胞壁)は酢酸に、繊維以外(細胞内容物)はプロピオン酸に)。酪酸は直接ではなく、酢酸とギ酸から生成されます。正常なルーメンの揮発性脂肪酸における酢酸の割合は60~70%と大きく、残りはプロピオン酸(15~20%)、酪酸(10~15%)、その他の酸です。酢酸はルーメンマットの浮上に重要な役割を果たします。プロピオン酸に比べて、酢酸は非常に弱い酸です。粗飼料を多く給与するとルーメン内の酢酸濃度とpHが高くなり、穀類を多く給与するとルーメン内のプロピオン酸濃度が高くなり、pHは低くなります。

酪農コラム /「炭水化物~繊維と乳牛の健康」(2)

酪農コラム /「炭水化物~繊維と乳牛の健康」(2)

繊維と唾液の分泌


 繊維と動物の健康は密接に関連しています。繊維は反芻を刺激して飼料摂取を調節するほか、正常なルーメン機能や消化を維持するために役立ちます。搾乳牛においては正常な乳脂肪率を維持するために重要な役割を担います。

 繊維は唾液の分泌に直接的に関連していて、唾液は食べたものを反芻するときの潤滑剤の役割があるほか、ルーメンpHを一定に保つためのバッファー(緩衝材)としても働きます。唾液の分泌量と反芻回数は繊維の長さと直接的に関係していることが1960年代に北米で行われた研究によって明らかになっています。唾液の流入により、前胃のpH(6~7)と第四胃のpH(2~3)には差ができます。前胃(第一胃、第二胃、第三胃)に適切な唾液の流入がないと、発酵槽としての機能が失われ、反芻動物に生命の危機をもたらします。

 唾液は繊維の消化にも影響します。ルーメンのpHが6.8→6.4→6.1と低下すると繊維の消化率は50%→37%→30.0%と低下します。唾液が正常に分泌されるためには反芻しなければならないし、適切な量と質の繊維を反芻できるかどうかが重要です。唾液は水の摂取量に関連し、ウシはルーメンの体積をいっぱいにするために十分な量の水を飲む必要があります。繊維は水を吸ってルーメン内でかさが増え、ルーメンの充満度や消化管全体のぜん動に良い影響をもたらします。

酪農コラム /「炭水化物~繊維と乳牛の健康」(2)

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