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タイセイ飼料株式会社

獣医/分娩の管理(16) - 良い牛に育てるために(12)

 ここまで初乳について話を続けていますが、メインタイトルにある通り「良い子牛に育てるため」には初乳のマネジメントが極めて重要であり、以下の通り話を進めています。

(1)初乳の要因
(2)子牛側の要因
(3)母牛側の要因 (←いまココ)
(4)環境の要因

 初乳に影響を与える母牛側の要因について、前回まで「初乳量」と「初乳中IgG濃度」の話を中心に進め、付随する情報として「IgGの吸収率をアップさせる方法」もご紹介しました。今回と次回のコラムでは「母牛の初乳中のIgGを増やす方法」と、逆に注意すべきポイントである「初乳中のIgGが減ってしまう要因」をお話ししたいと思います。

––– 初乳中のIgGを増やす方法–––

1.分娩前母牛へのコリン給与
前回のコラムにも記載した内容になります。(http://www.taiseishiryo.jp/tp_detail.php?id=56)。 紹介した試験は乳牛の結果ですが、和牛においても高い効果を発揮します。分娩予定日の3週間前から飼料に混合給与することで、分娩後の初回初乳におけるIgG総量が30%以上も増加します。注意点として、コリンはそのままの形態ではルーメン(第一胃)で分解されてしまうため、しっかりとルーメンバイパス処理された信頼ある製品のご利用をお勧めします。

2.分娩前母牛へのワクチン投与
 多くの牧場さんで取り入れられている方法かと思います。分娩前の母牛に不活化ワクチンを投与することによって母牛の血中抗体価が上昇し、その血液を介して作られる初乳中の抗体価も上昇する、という仕組みです。一例を挙げると、ホルスタインの未経産牛と初産牛(次産次が初産と2産)に下痢5種混合ワクチンを分娩予定45日前および15日前の2回接種した試験では、未接種群では初乳中IgG濃度が32.0 ± 4.6mg/mlと、良質初乳の基準とされる50mg/mlを下回っていましたが、ワクチン接種群では172.7 ± 33.0mg/mlと大幅にアップしました(笠井ら、2010)。

獣医/分娩の管理(16) - 良い牛に育てるために(12)

 また、以下は弊社の顧客牧場さんでの事例ですが、ワクチン2回投与の有効性を強く確認できたケースをご紹介します。

 その牧場さんはフリーストールの酪農家さんですが、これまでも分娩前の母牛には下痢5種混合ワクチンを投与していました(投与ワクチンは下痢5種混のみで、呼吸器病ワクチンを含む他のワクチンは一切無し)。しかし、本来は2回投与が推奨されている下痢5種混合ワクチンを1回しか投与しておらず(*)、初乳中の抗体価がどこまで上昇しているかは疑問がありました。この牧場さんでは搾った初乳をパスチャライズにより低温殺菌したものを子牛に十分量与えていますが、獣医師に治療依頼するほどにまで悪化する下痢症が非常に多かったのです。そこでワクチンプログラムを見直し、全頭に対して推奨されている2回投与(分娩予定6〜8週前+その4週後)を実施する様になった結果、下痢症の頭数は大きく減少しました(実際の数値データはまた改めての機会にご紹介したいと思います)。
(*ワクチンの効果は1年続くとされているため、分娩間隔が365日未満であれば分娩前投与は1回でも良いとされていますが、個体間でのバラツキや対象牛のリスト管理の煩雑さ+投与間違いの発生を考慮し、弊社では全頭に2回投与を推奨しています)