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タイセイ飼料株式会社

獣医/分娩の管理(18) - 良い牛に育てるために(14)

––– 初乳中のIgGが減ってしまう要因 (続き)–––

4.疾病などによる乾乳期間中の体重減少
 疾病など何らかの原因によって乾物摂取量が低下する、または低下はせずとも消化吸収に影響があることで乾乳期間中に体重が減少した個体では、初乳中のIgG濃度が低下します。放牧型の酪農牧場におけるある試験では、乾乳期間中に体重が減少した個体としなかった個体の初乳中IgG濃度を比較すると、23.1 g/L vs 61.9 g/Lと非常に大きな差があり、体重減少した牛はそうでない牛よりも初乳中IgG濃度50mg/mL以下である可能性が4倍高かったと報告しています(Mulder、2017)。

【対策】
 乾乳期間中に基礎疾患の治療を十分に実施し、適切に設計された飼料を給与する。

* なお、乾乳期の飼料がグラスサイレージのみであるなどもともと栄養制限した状態であったとしても、初乳中のIgG濃度には必ずしも悪影響を及ぼさないとする報告は数多くあります (Blechaら、1981;Houghら、1990;Quigley and Drewry、1998;Nowak、2012;Dunn、2017)。 子牛の生時体重も通常と変わりません(Rocheら、2005)。しかし重要な問題として、子牛の初乳吸収能力や初乳そのものの吸収のしやすさには悪影響が出ている可能性が高く、初乳の吸収率低下や生後の疾病は多くなることが分かっています(Corah、1975;Hough、1990;Dunn、2017)。

 以上から、極端な栄養制限は悪影響が大きいため、避けた方が良いと考えられます。

獣医/分娩の管理(18) - 良い牛に育てるために(14)

5.暑熱
 暑熱ストレスは初乳中IgG濃度に負の影響を与えることが分かっています。しかし実は、暑熱が初乳の質に与える影響については過去、一定の見解が得られていないこともありました。季節によって初乳中Igの変化は認められない(Kruse、1970)、夏季は初乳中Ig濃度が高い(Shearer、1992)というのが一例ですが、これらは「暑熱以外の要因」も多いため、純粋な「暑熱の影響」を調べることができていませんでした。

 その後、実験的に暑熱環境を再現しコントロールする手法によって、暑熱そのものの影響が明らかになりました。一例ですが、6頭の未経産牛に分娩前の3週間、実験的に「日中 31.5℃ → 夜26℃(*)」という高い暑熱負荷を与えた研究では、気温18℃(*)の対称群6頭と比較して、乾物摂取量が低下し(8.3kg/d vs 9.8kg/d)、初乳中IgG濃度も低下しました(64.0mg/mL vs 79.25mg/mL)。なお、初乳量に差はありませんでした(2.4kg vs 2.9kg)(Nardone、1997)。
(*詳細条件は下図参照))

 さらに、暑熱の影響は初乳だけでなく胎子にもおよびます。子宮内で暑熱にさらされた胎子では初乳吸収率が低下し疾病は増加します(Donovan、1986;Martin、1975;Tao、2012)。つまり、いつもと同じ条件の初乳を飲ませていたとしても、吸収率が落ちていることで結果的に子牛の血中IgG濃度が上がらず疾病が多くなります。

 上記で紹介した実験の気象条件は、本州では決して珍しくない気温と湿度であり、場合によっては日中はもっと暑くなります。今年2021年の北海道も100年に1度と言われる猛暑でしたが、上記と同様の気温が10日以上続いた地域もあり、暑熱対策の重要性が改めて認識されました。暑熱の影響は母牛を介して初乳と胎子の双方に大きな悪影響を与えるため、徹底して抑える必要があります。

【対策】
 各種暑熱対策

獣医/分娩の管理(18) - 良い牛に育てるために(14)