酪農コラム/脂肪の代謝1ー乳脂肪の合成(2)
コラム
脂肪代謝
脂肪生成の生化学が少し理解できると乳脂肪の生成と乳脂肪低下のメカニズムが理解しやすくなります。科学の用語で脂肪はトリグリセライドと呼ばれます。これは脂肪が常に3つの脂肪酸と1つのグリセロールで構成されているからです。トリグリセライドは枝が3本ある木の幹の形をしています。これらの枝は長さや形が異なり、それらがトリグリセライド(脂肪)の性質を決定します(牛脂、ラード、油など)。
ルーメン内発酵により炭水化物の大部分は揮発性の脂肪酸(C2~C6、数字は脂肪酸に含まれる炭素の数)となります。脂肪酸に含まれる炭素鎖はC2~C30まで様々ですが、ここではC20までの長さの脂肪酸の話がほとんどになるでしょう。以前に述べたように、ルーメン内で繊維(NDF)は酢酸に、デンプン(NFC)はプロピオン酸になります。反すう動物の脂肪生成において酢酸と酪酸が大きな役割を果たしています。これらの酸は血液中に取り込まれて乳腺に届き、長い脂肪酸を作るための材料となります。脂肪酸は順々につながり(酢酸は炭素二つでできており、その倍数)、ミリスチン酸(C14)や一部はパルミチン酸(C16)の長さになります。C14以上の脂肪酸は小腸で吸収されたものか、体脂肪から動因されたものです。
飼料や粗飼料に含まれる不飽和脂肪酸は速やかに脂肪酸とグリセロールに分解されます(不飽和脂肪酸は炭素鎖の一部の水素が欠落したものです)。不飽和脂肪酸はルーメン内の細菌やプロトゾアにより速やかに水素添加され、飽和脂肪酸になります。脂肪酸は下部消化管に流入し、消化、吸収されます。不飽和脂肪酸でも一部は水素添加されずにルーメンを通過し小腸で吸収されます。
反すう動物も非反すう動物も特定の脂肪酸を生成することができないため、食べるものから供給されなければならず、それは必須脂肪酸と呼ばれています。リノール酸(C18:2)やリノレン酸(C18:3)は必須脂肪酸です。植物はリノール酸やリノレン酸を多く含んでいますが、ルーメンで水素添加されてしまう割合が高いため、正常なルーメンの状況ではそのまま乳脂肪の合成にはあまり利用されません。乳中にはリノール酸やリノレン酸はわずかに含まれるだけです。
(つづきます)