酪農コラム/脂肪の代謝1ー乳脂肪の合成(3)
コラム
乳脂肪の生成
乳脂肪率は、動物の種によって大きく異なります。乳脂肪が高いのは海に棲む哺乳類(30~55%)や寒冷な地域に住む動物(ホッキョクグマは31%)などです。家畜の中では水牛や羊(10~12%)が高く、牛の中ではジャージーやゼブーの乳は脂肪を多く含んでいます。ホルスタイン種では2~6%です。
乳脂肪の合成は全ての主要な栄養素が複雑に連携するプロセスが必要です。脂肪の代謝だけに着目するなら、三つの脂肪酸が乳脂肪の生成に必要です。
①繊維の消化により得られる酢酸、酪酸(寄与率~50%)。ルーメンの壁から吸収される。
②長鎖脂肪酸(ほぼ飽和で、一部は不飽和)(寄与率40%)。ルーメンを通過し小腸で吸収される。
③組織の脂肪分解による長鎖脂肪酸(C16、C18と必須脂肪酸)(寄与率10%)。
乳脂肪生成に影響を与える主な要因には粗飼料とNFCの比率、粗飼料の品質(サイレージの発酵など)、脂肪の種類、ミネラル、ビタミン、環境(ヒートストレス)、生産レベル、給与システム(ペレットかマッシュか、TMRか分離給与か、放牧か舎飼いか、飼料のパーティクルサイズ、水分含量、摂取量不足、選び食い)、管理方法(一日の搾乳回数、搾乳の間隔)などがあります。給与と管理のシステムはそれぞれの牧場や地域によってさまざまなので、乳脂肪率に問題がある場合には上記の点に注意を払う必要があります。乳脂肪生成に影響を与える度合いも、これらの要因により変化します。
牧場で散見される主要な問題の一つは、乳脂肪の生成プロセスが停滞することです。乳脂肪低下の原因と対策については次章で述べることとします。
(おわり)