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タイセイ飼料株式会社

酪農コラム/現場でのDMI推定の方法

 今回も引き続き牛が食べるえさの量【DMI(乾物摂取量)】の話をしていきたいと思います。

 前回は飼料に含まれる水分の量で、与えている飼料の実質の重量が変わるという内容でした。今回は「牛たちにどの程度の飼料の量(乾物重量)を食べさせることができるのか、与えるべきなのか」について触れてみたいと思います。

 搾乳されている牛が通常どの程度の量の餌を食べるのかについては長年研究が積み重ねられてきています。2021年に発刊された北米の飼養標準(NASEM2021)では以下のような推定式が提示されています。

酪農コラム/現場でのDMI推定の方法

 牛側の要因としては体重・乳量・乳成分・分娩後日数・産次・太り具合がその牛の採食量に関連しているのがわかります。

 前回発刊された北米の飼養標準(NRC2001)では以下のような課題がありそれを補正したものとされています。

・分娩直後の予測される採食量が低すぎる
・乳量の高い牛のDMIを過大に見積もる(そんなに食べられない=痩せる)
・乳量の低い牛のDMIを過少に見積もる(もっと食べている=太る)
・飼料側の要因を考えていない

 今回から飼料側の要因としてNDF(繊維)の量や質も含めた推定式が発表されました。酪農場に出入りしている方々にとっては牧草が変われば牛の採食量も変わることは周知の事実ではありますが、学術的にはようやく牧草の評価も含めた推定式が出来上がったところです。

 このように各種要因から推定される採食量の精度(正確性)というのは時代とともに向上しているはずですが、計算によって推定した量よりも多く食べられる牛群もあればそうでない牛群もあります。農場毎に環境は異なり個体差もありますので、実際の目の前の牛が「どの程度の量食べているのか・食べられるのか」という点は現場で確認していく必要があります。

 農場において1頭当りの乾物摂取量をどのように確認していくかは非常に難しいと第一回のコラムにも書きましたが、やはり可能な範囲でこの「量」を把握しておきたいところです。

 通常、牛群においては「作成・配餌した量」から「残飼量」を引いて1頭当りの採食量を把握するのが基本になります。実際、残飼の重量・水分含量などを毎日測るのは難しいでしょうから、代わりに体積などを目安に残飼量を把握されている方が多いです。一度、残飼の一部をサンプリングして体積と重量を計測してみるのも良いかと思います。

 牛1頭1頭の採食量を把握するのはさらに困難を極めます、繋ぎ牛舎であっても隣接する飼槽からの採食(いわゆる盗食)などもあり正確には把握しきれません。

 そのためルーメンフィルスコア(RFS:Rumen Fill Score)という見方を使い採食量が十分か否かを判断しています。直訳すると「第一胃・充填(充満する)・点数」です、詳細は今回割愛させていただきますが、牛を左側から見て膁部(けん部:写真参照)の様子からその直下にある第一胃の膨れ方に注目します。泌乳ステージ・姿勢・採食してからの経過時間など様々な要因で変動しますので、常に同じ時間帯に観察するなど条件を一定にして比較すると分かりやすくなります。

酪農コラム/現場でのDMI推定の方法

 近年、反芻をモニタリングする牛のウェアラブルデバイスを利用している農場も増えています。飼料の質が一定であれば乾物摂取量の変動とも関連してきますので参考になる情報です。

 採食量の把握は、飼槽と牛の状態を日々観察していただくことから始まります。

 牛に給与する飼料を考える際とても貴重な情報ですので、先ずは1日の中で飼槽と牛を眺める時間をつくってみてください。毎日農場に伺うことができない我々関係者にとっても農場の状況を理解する上でとても参考になる情報です。