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タイセイ飼料株式会社

酪農コラム/「炭水化物2~非繊維と牛の健康(2)」

「炭水化物(2)非繊維と牛の健康」(全3回)の2回目です。

(1)糖
 糖はNFCの中でも特に早くルーメン内で分解されます。糖には単糖、二糖、オリゴ糖が含まれます。単糖(グルコース、フルクトース)や二糖(ショ糖、乳糖)のような水溶性のNFCは糖蜜、ビート、高糖度トウモロコシ、乳清などに多く含まれるもので、ルーメンですぐに発酵されます。イネ科やマメ科の草に含まれる糖の量には大きなバラツキがあります。放牧地の生草では糖含量が10%を超えることもありますが、乾草やサイレージではそれらの調製(乾燥や発酵)中の呼吸作用によって糖含量が減少します。温暖な地域において、イネ科の草は主にフルクトースを貯めこみますが、マメ科の草(アルファルファ)が貯めこむ炭水化物はガラクトースとペクチンです。

酪農コラム/「炭水化物2~非繊維と牛の健康(2)」

(2)デンプン
 植物が炭水化物を貯めこむときの主な形はデンプンです。飼料として利用される様々な穀類、食品副産物や粗飼料でデンプンの含量は異なります。穀類に含まれるデンプンはα1,4結合でグルコースが結合したもの(直鎖、アミロース)と、α1,4とα1,6の2種類の結合を持つもの(分岐鎖、アミロペクチン)を含みます。アミロースは2,000個ほどのグルコースが結合したもので、分子量が小さく水溶性ですが、アミロペクチンは2,000~22万個ほどのグルコースが結合したもので分子量が大きく水に溶けません。穀類の子実に含まれるデンプン中のアミロースの割合は同じ種の中でも遺伝的な性質で0~75%と大きく異なります。一般的な穀類の子実のデンプン中には70~75%がアミロペクチンとして、25~30%がアミロースとして含まれますが、穀類にはワキシー種と呼ばれる品種があり、アミロースは非常に少ないか全く含まれていません。ワキシー種の例として、もち米があります。もち米は殆どがアミロペクチンのため、うるち米と異なるもちもちとした食感があります。ワキシー種は消化率が高く、家畜の飼養成績も良いことが牛、羊、山羊で報告されています。

 デンプンの消化率はアミロースの含量に反比例します。また、穀類のデンプンの消化率は、そのデンプンがどのくらい結晶化しているか、穀類の種や品種、胚乳のタイプ、加工の方法によって異なります。

酪農コラム/「炭水化物2~非繊維と牛の健康(2)」

(3)ペクチン
 ペクチンはヘミセルロースとガラクタンに深く関係しており、それらはマメ科植物を含む双子葉植物の細胞壁の主要な構成物です。

 ペクチンはほ乳類が消化管内で分泌する酵素では消化されませんが、ルーメン内の微生物は素早く完全に分解します。ペクチンはリグニンとは結合しておらず、化学分析においては中性デタージェント(洗剤)で溶ける部分に含まれます。アルファルファはペクチンを5~10%含み、ビート、ビートパルプ、柑橘類やリンゴなどフルーツにはもっと多くペクチンが含まれます。イネ科の草や穀類にはペクチンは1%以下しか含まれません。

(4)β-グルカン
 β-グルカンはグルコースがβ1,3結合とβ1,4結合でつながったものです。β-グルカンはセルロースとは結合しておらず、ルーメンで素早く完全に分解されます。β-グルカンはイネ科の草の細胞壁に多く含まれ、また、えん麦、大麦、ライ麦のフスマ(子実の殻)の主要な成分ですが、トウモロコシ、小麦、米にはほとんど含まれません。β-グルカンを多く含む穀類のフスマには粘着性があります。

酪農コラム/「炭水化物2~非繊維と牛の健康(2)」

デンプンの消化率
 アミラーゼ(デンプンを分解する酵素)は反芻動物の唾液には含まれず、反芻しない草食動物の唾液には含まれます。反芻動物はデンプンを消化するのが得意ではなく、ルーメン内の微生物の力を借りて消化を行います。ルーメン内の細菌と原生動物はアミラーゼを生成し、デンプン消化のほとんどは細菌が作るアミラーゼによるものです。ルーメンでの分解の流れは、デンプン→マルトース→グルコース→プロピオン酸となります。ルーメンでの消化を免れバイパスしたデンプンは小腸で分解されグルコースとなって吸収されます。
米国アリゾナ州で1990年代に行われた研究では、加工されていないデンプン源は、えん麦>小麦>大麦>トウモロコシ>マイロの順にルーメン内で分解されやすいことが示されています。ウィスコンシン州における穀類や食品副産物中のデンプンのルーメン内の分解に関する研究では、トウモロコシは大麦よりもゆっくりと分解されることが示されています。

 乳牛用の飼料中の最適なデンプン含量ははっきりと確定されていません。米国ウィスコンシン州とミシガン州の高乳量牧場における調査では、飼料中のデンプン含量は25~30%でした(乾物中)。反芻動物用の試料の大部分をデンプンが占める場合、繊維の消化率は低下します。1980年代にカナダで行われた研究では、飼料中のデンプンが8%から32%に増えるとNDFの消化率は直線的に低くなりました。日本国内の牧場では食品副産物を使うケースも多いことから、飼料中のデンプン含量は15~25%程度であることが多いように見受けられます。コーンサイレージ中心で給与する牧場では穀類の割合が増えることからデンプンのレベルが高くなります。

酪農コラム/「炭水化物2~非繊維と牛の健康(2)」

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