酪農コラム/炭水化物4~乳糖の生成(最終回)
コラム
「炭水化物4~乳糖の生成」(全3回)の最終回です。
粗飼料の種類と乳糖の生成
粗飼料中の糖とデンプンの含量は草種(イネ科かマメ科か)、気候(熱帯か温帯か)、調製方法(サイレージか乾草か)、サイレージのタイプ(グラスかコーンか)、もしくは生草かによって大きく異なります。これらの粗飼料は消化の度合いもルーメン内での揮発性脂肪酸の発生の度合いもそれぞれ異なります。一般的に、乾草給与よりも良く管理された草地の生草での放牧やサイレージの方が牛において乳糖の生成が多く、グラスサイレージよりも明らかにコーンサイレージの方が乳糖の産生が多くなります。
最近のオランダの研究ではグラスサイレージ(100%、67%、33%、0%)をコーンサイレージ(0%、33%、67%、100%)に置き換えると飼料中のデンプン含量が増加し、乳糖が4.39%(コーンサイレージが0%)から4.61%(コーンサイレージが100%)に上昇しました。同じく乳量はグラスサイレージのみで22.6kg、67%コーンサイレージの飼料で24.2kgとなりました。最近のニュージーランドの研究では放牧している牛にデンプンを給与したところ、乳糖は4.89%(放牧のみ)から4.99%に増え、個体乳量は23.1kgから27.7kgに増えました。
現場での実例
飼料価格の高騰により、副産物の利用が増えています。副産物の中でも、デンプン含量は大幅に異なります。穀類に置き換えてデンプンの低い食品副産物を飼料に使うと乳糖の合成は減少します。数日から数週間で劇的に乳量の低下がみられます。穀類から置き換える量が多ければ多いほど乳量の低下は大きくなります。穀類を食品副産物に置き換えるときには工夫が必要です。その際、乳中の乳糖含量は変化しないことに注意が必要です。多くのケースで乳糖の含量は注目されず、乳量低下の原因が他にあると考えられています。
北海道のある牧場(80頭繋ぎ)では、穀類を食品副産物に置き換えた後に乳量が低下しましたが、酪農家さんはサイレージがその原因だと主張していました。ですが、デンプンの摂取量が極端に低下したことが原因であることを指摘し、問題は解決しました。このような事例はより大きな牧場でも起こりえます。
本州で1,500頭弱を搾乳している牧場では、同様の原因で乳糖の年平均が4.45%から4.25%以下になり乳量も減少しました。
乳頭の低い牧場(北海道・60頭繋ぎ)において、飼料や環境などをすべて見直した結果、1年後には乳糖が4.40%以下から4.60%まで増加し、乳量は22㎏から35㎏まで増えました。
まとめ
乳牛において乳糖の合成は、適切に非繊維炭水化物を利用できているかどうかの栄養的シグナルです。乳糖が低いときは飼料中のNFCが不足しているかルーメンでの消化が良くない状態を示しています。国内の膨大な数の乳成分データによれば乳糖の含量はだいたい4.2~4.7%に分布しています。適切な乳生産のためには乳糖が4.50%以上あることを推奨します。乳糖が4.40%を下回っていれば、栄養バランスと利用性の問題がある可能性があります。乳糖が4.30%以下であれば、重大な栄養不足の問題が発生しています。このような数値は決して珍しいものではありません。
乳糖含量の推移をチェックすることは、牧場における栄養管理のために有効な手法です。乳糖合成をモニターすることで、乳質、乳量、そして乳牛の健康を改善することができると考えます。
(「炭水化物(4)乳糖の生成」おわり)