酪農コラム/蛋白質3~飼料の加工と蛋白質の消化(2)
コラム
カプセル化
脂質や他の物質によるカプセル化は、ルーメン内での分解を減少させ高いバイパス率を牛に供給します。このカプセル化の技術(アミノ酸や尿素など)はたくさんあります。必須アミノ酸の中でメチオニンやリジンは乳量や乳蛋白合成に必要なアミノ酸と言われており、ルーメンをバイパスさせるためカプセル化された商品が市場に出回っています。
ルーメンでの消化
穀物と副産物のルーメン内の蛋白質分解は様々です。とうもろこし蛋白質(ゼイン)は大豆や大麦の蛋白質より分解性が低いです。ゼインは水に溶けにくい性質を持っているため、ルーメン内でゆっくり溶けます。コーングルテンミールは高CP(60~65%)でルーメン内での分解性が低く、バイパス性の高い原料です(メチオニンは多く、リジンは少ない)。ウィスキー粕(DDG。現在はソリュブルも含まれ、DDGSと言われている)やビール粕の蛋白質はコーングルテンフィード、ふすまや大豆皮より分解されにくいです。しかし、これらの原料は過剰に熱加工された可能性があり、糞までバイパスされるかもしれません。
現場の事例とまとめ
日本では色々な種類の高蛋白原料が出回っています。例えば、加熱大豆(圧片、エクストルーダー、きな粉など)、大豆粕、加熱処理大豆粕、コーングルテンミール、なたね粕、DDGS、バイパスアミノ酸などです。乳蛋白質が低くMUNが高いときは加熱大豆、加熱処理大豆粕やコーングルテンミールなどをおすすめします。乳蛋白質やMUNが低いときは大豆粕やなたね粕がおすすめします。バイパスアミノ酸は必要に応じて判断するべきです。バイパスアミノ酸を使用するとき、給与飼料全体の成分をチェックするべきです。なぜなら、飼料中のアミノ酸が不足している可能性があれば、バイパスアミノ酸は有効に働きますが、ある蛋白質原料から単純に置き換えてしまうと、全体の栄養成分が崩れてしまう可能性があるので注意が必要です(木を見て森を見ず)。
実際の現場事例では、アミノ酸を加えて蛋白質原料(大豆粕など)を減らしたところ、一時期は乳量が増えましたが時間が経つと牛が痩せてきて、全体的な乳量が落ちるところもありました。蛋白質含量だけでなく、全体の栄養バランスが崩れないようにメニュー設計するべきです。大豆粕などの原料=アミノ酸原料ではありません。
蛋白質原料はコストが高いものですが、原料を効果的に利用できれば、牛の健康と牧場全体の利益が改善します。そのためには、乳量、乳成分(乳蛋白質やMUNなど)、泌乳ステージ、繁殖成績、疾病などをモニターして判断すべきです。
(おわり)