酪農コラム/ご挨拶およびDMIについて
コラム
【ご挨拶】
皆様はじめまして、私は中部飼料(株)という飼料メーカーの研究技術部に所属する獣医師の高木信明と申します。
この度、タイセイ飼料株式会社様のホームページでコラムを執筆する機会をいただきました、これから半年ほどお付き合いいただければと思います。
飼料メーカーに所属する獣医師として弊社の営業担当とともに各地の酪農場に訪問させていただき、牛を見せていただき、皆様の声を聴かせていただき、一緒に考え、より良い飼料・酪農経営に寄与できるよう活動させていただいております。
私の略歴は後述させていただきますが、前職で農業共済組合にて臨床獣医師として勤務していた経験があります。「なぜ牛は病気になるのだろうか?なぜ受胎しないのだろうか?」といった疑問から飼料に興味を惹かれ、「餅は餅屋」という思いで飼料業界の門をたたき今日に至ります。飼料メーカーの「中の人」としての視点も織り交ぜ、少しでも興味を持っていただけるお話ができたら幸いです。
【DMI】
早速ですが今回は「DMI(Dry Matter Intake:乾物摂取量)」についての話をしていきたいと思います。
牛の餌に関する書籍のほとんどがこの「DMI」の話題から始まっているといっても過言ではないと思います。皆さんもどこかで「DMIを最大に」といったスローガンを一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
実際、農場で目の前にいる牛が1日に何㎏の飼料を摂取していたか把握するのは極めて難しいものです。TMRの場合、メニューを聞き取り牛群頭数で割っても、あくまで給餌した量の1頭当りの平均値です。残飼として捨てられる飼料や、牛が飼槽から引き込んだり遊んだりして口に入らなかった餌もあります。このように厄介なDMIですが、牛の栄養・健康を考えていくのにとても大切な指標になりますので、ぜひ慣れ親しんでいただきたいと思います。
DMIが乾物重量(水分を取り除いた、乾燥状態での重さ)であることも、話をややこしくしがちな要因のひとつです。「牧草10㎏」と言っても含まれている水分の違いで、採食量としての評価が大きく異なります。例えば水分を80%含むような高水分サイレージでしたら乾物重量としては「2㎏」と小さい数字になります。そうなると含まれる栄養素の量も水分によって大きく上下することは明らかです。
実際、牧草は牛の餌の約4~5割を占めるもので、水分の違いは牛への影響として決して小さくありません。「牧草の水分」是非とも知っておきたい情報です。
昨今DMIを最大にしたくても無駄に給餌するわけにはいかない状況です。無駄・ムラを無くすためにも「牧草の水分」をいつもより気にしてみてはどうでしょうか。
【略歴】
2006年3月
麻布大学獣医学部 卒業
2006年4月~
北海道の道南農業共済組合に奉職
北海道近代酪農発祥の地とされる渡島半島の八雲町で臨床獣医師として診療業務に従事
2009年4月~
損害防止指導室(生産獣医療)業務の専任獣医師として従事
2015年1月~
中部飼料株式会社(本社:愛知県)に所属し酪農を担当。研究、技術サポート等に従事
(以上)