トピックス

北海道十勝地方における飼料の専門会社。安全、安心な飼料ご提供を第一に、畜産家の皆様や消費者の皆様のご要望にお応えします。

  1. home

会社案内

タイセイ飼料株式会社

獣医コラム/肢蹄病の原因と予防(6)- 蹄の病気について

 先月はDDの病変についてイメージ像を掲載しました。今月はDDの治療についてイメージ像を掘り下げていきたいと思います。

––– DD(趾皮膚炎)の痛みをとる方法とは? –––
 皮膚表面に見られるDDですが、DDのステージ毎にどの程度皮膚の深くまで病変部位があるのか先月のコラムに掲載しました。
 なぜ、DDのステージ毎に病変部位の深さが重要になるかというと、DDを治療する際に『1回の治療でどの程度深くまで治療できるか』が重要になるためです。
 DDの治療は皮膚に薬剤を塗布した局所治療が一般的ですが、1回の治療だけでは完治せず、2回3回と治療されている現状を散見します。
 治療効果を確認し再診する事は大切な事だと思うのですが、枠場まで移動する牛のストレス/治療費/労働力を考慮すると1回の治療で最大限の効果を発揮するのが理想かと思います。
 さて、ではどのような治療方法があり、どのような効果を見据えての治療なのでしょうか?代表的な治療方法を下記に掲載します。

 1.抗生物質の塗布
   →DD原因菌の殺菌
 2.ハーブなどの抗菌物質塗布
   →DD原因菌の増殖を抑制
 3.酸性溶液/軟膏の塗布
   →DD原因菌の殺菌 + 病変組織の焼烙(=焼き切る)
 4.オイルの塗布(多くの場合、治療する薬剤に含まれる)
   →皮膚を保湿し健全性を向上
 5.外科的切除
   →病変組織/感染巣の切除

 代表的な治療方法を上述しましたが、治療方法についてはエビデンス(科学的根拠)に基づく治療法もあれば、現場で治療し手応えがある治療を追求する事例も見られます。
 DDの治療に用いる抗生物質としてはオキシテトラサイクリン(OTC)やリンコマイシン(LM)が有名です。OTCやLMの治療効果が大きいことはDDの治療を行った事がある方はご存知かと思います。ただ、OTC/LMを塗布しただけだと再発/再定着するという報告もある一方で、OTCと外科的切除を組み合わせることで1年以上再発しないという報告もあります。私見ですが、これは先月掲載した『病変部位の深さ』に起因しているのではないかと考察しています。つまり、OTCの1回塗布のみで治りきらなかった病変部位を、外科的切除+OTC塗布では除去できたのではないかという事です。 
 特に8月に掲載したヒゲイボ病などの増殖性病変は病変部位が分厚いため、局所塗布した薬が届かないと報告されています。このような場合には局所の薬剤塗布だけでなく、切除も視野に入れると早期の治癒が図れると考えられます。
 OTCは局所塗布しても血中に吸収→乳中から微量に検出される事がわかっています。OTCがバルク乳から検出されるリスクは殆どないと言われていますが、個人的には切除+抗生物質以外の薬剤を用いて治療する事で、一定の効果が得られています。
 
 以下にDDを切除した一例を掲載しますが、DDが蹄踵(ていしょう)に食い込み痛みを生じていました(詳しい解剖は2024.09のコラムに掲載しています)。蹄踵というのは蹄の踵(かかと)ですが、基本的には深く削らず厚みを持たせた方が良い部位です。ただ、DDによる炎症で蹄真皮に痛みが生じている場合には、蹄踵が蹄真皮を圧迫し痛みを生じます。そのため『治療削蹄としては』蹄踵を削る事もあるという事です(蹄踵は可能な限り削りたくありませんが)。

獣医コラム/肢蹄病の原因と予防(6)- 蹄の病気について

 本コラムをご覧の方で自家治療をされる農家さんも多いと思います。自家治療をする際にDD病変部位の深さを意識すると、治療回数が1回でも減るかもしれません。

 さて、DDの原因・病態・治療と続けてきましたが、次回より『予防』について掲載していきたいと思います。

(文責:牧野 康太郎)

― 参考資料―
1. Clinical, histologic, and bacteriologic findings in dairy cows with digital dermatitis (footwarts) one month after topical treatment with lincomycin hydrochloride or oxytetracycline hydrochloride
2. Digital dermatitis of the accessory digits of dairy cows
3. Antibiotic residues in milk samples obtained from cows after treatment for papillomatous digital dermatitis