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タイセイ飼料株式会社

酪農コラム/「炭水化物2~非繊維と牛の健康(最終回)」

「炭水化物(2)非繊維と牛の健康」(全3回)の最終回となります。

NDFとNFC
 通常、飼料中のNDF濃度とNFC濃度は反比例します。つまり、飼料のNFCを増やそうとするとNDFは減少します。NFCが高くなるほどルーメンの問題や代謝病が多くなるため、NFCを増やす前にNDFと繊維が要求量を満たすようにしておかなくてはなりません。

 飼料中のNFCやデンプンのレベルに関する研究は、TMRすなわち粗飼料と濃厚飼料が同時に口に入る前提で実施されてきました。そのため、そこから得られた結論は、粗飼料と濃厚飼料を別々に給与している場合には当てはまりません。TMRを利用する酪農家においては、デンプンの過剰給与は不適切な攪拌、牛群分け、1日1回給与、低水分、飼料の形態(フレーク&ペレットか、フレーク&マッシュか)などが原因となって発生します。粗飼料と濃厚飼料の分離給与の場合は、盗食や選び食い、給与回数などによってデンプン過剰が発生します。

酪農コラム/「炭水化物2~非繊維と牛の健康(最終回)」

糖と味蕾(みらい)
 人間では空腹感と満腹感は血中のグルコースレベルでコントロールされています。たとえば、グルコース濃度がある限界を超えると、脳は食べることを止めるようシグナルを出します。牛の空腹感と満腹感はルーメン壁にあるプロピオン酸センサーと血中グルコースレベルの両方でコントロールされています。このコントロールの方法は人間も牛もほぼ同じです。例を挙げると、夕食の前にデザート(アイスクリームやチョコレート)を口にすると、食欲は減退します。牛ではより多くのデンプンを食べると粗飼料の摂取量は減少し、ルーメンアシドーシスの危険性は高まります。牛は賢い動物で、人間よりも優秀な味覚センサー(味蕾、みらい)が舌にあり、例え化学的な成分が同じようなものであってもおいしいものとまずいものの違いが判ります。

酪農コラム/「炭水化物2~非繊維と牛の健康(最終回)」

NFCと乳牛の健康: 現場での実例
 ルーメンアシドーシスに関連した代謝病は多くの酪農家にとって厄介な問題です。NFC源となる飼料の種類によってルーメンのpHが低下しますが、それだけが原因ではありません。ルーメンアシドーシスの原因は、粗飼料摂取量不足、消化の早いデンプンの多量給与、給与回数が少ない、粗飼料と濃厚飼料の分離給与、選び食い、不適切なTMR混合、細かい粒度、穀類の種類、加工方法、繋ぎ牛舎における居住性などが挙げられます。アシドーシスは小規模な繋ぎ牛舎から大規模なフリーストール牛舎まで、どんな場所でも発生します。アシドーシスの症状は様々ありますが、ひどいときには鼻血を出し、死亡することも有ります。

 ある農家さんで牛群のほとんどが重度のアシドーシスになっていたのを、飼料と管理方法の単純な変更によって牛を健康にし、生産性を回復できた例があります。長い粗飼料を自由摂取にし、フリーストールでは重曹を設置、つなぎ牛舎では粗飼料と濃厚飼料の給与回数を増やしました。飼料中の穀類(デンプン)を少なくし、デンプンをあまり含まない食品副産物に置き換えてNFCを低くすることも役に立ちます。

 九州のあるつなぎ牛舎の酪農家さんは、夏の暑い時期においても乳牛の健康と乳生産に関してすばらしい飼養管理をしていました。彼は粗飼料と濃厚飼料を1日6回に分けて給与していました。

 コーンサイレージとグラスサイレージをメインで給与する北海道のフリーストール牛舎の酪農家さんでは、それぞれの群に長い粗飼料を自由摂取できるようにしたところ、3~6か月で乳量も乳牛の健康も回復しました。ルーメンフィル・スコアははっきりと改善し、第四胃変異の発生は大きく減少し、乳量の改善につながりました。コーンサイレージや輸入粗飼料をベースとしたTMR給与のケースでも同じ方法で改善が見られました。

酪農コラム/「炭水化物2~非繊維と牛の健康(最終回)」

まとめ

 高泌乳牛は大量のデンプンを摂取します。例えば、22kgの乾物中23%のデンプンを含む飼料を摂取する牛は22×23÷100= 5.06kgのデンプンを1日に摂取します。牛にとってこの量のデンプンを消化し、その代謝産物を吸収するのは大きなチャレンジです。消化と吸収にあたって、全てがうまくいけば牛は代謝に苦しむことはないでしょう。しかし、私たちが設計した通りに正確に混合された飼料を全ての牛が食べられるわけではないので、様々な代謝病の問題が発生してきます。NFCは乳牛の栄養において非常に重要な役割を担っていますが、単純なミスや間違いで乳牛の健康や生産性に悪影響を及ぼしてしまいます。

(「炭水化物(2)非繊維と牛の健康」おわり)