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タイセイ飼料株式会社

酪農コラム/「炭水化物3~飼料の加工とデンプンの消化(2)」

「炭水化物(3)飼料の加工とデンプンの消化」(全3回)の2回目です。

蒸気加工
 穀類の加工に用いられる蒸気加工には、厚さによってスチームフレーク加工とスチームロール加工の2種類があります。蒸気加工はトウモロコシや大麦に用いられます。えん麦もスチームロール加工されますが、あまり一般的ではありません。

酪農コラム/「炭水化物3~飼料の加工とデンプンの消化(2)」

スチームロール加工
 一定の時間、蒸気で加熱することはデンプンの糊化を助けます。スチームロール加工は釜にトウモロコシの粒を入れ10~15分、93~100℃で蒸気をあてた後、2本のロールの間を通して0.4~0.5kg/リットル(35~45ポンド/ブッシェル)のフレークにします。これに対し、ドライロール加工という方法ではスチームをあてずに2本のロールの間にトウモロコシを入れ、粒を砕きます。

 穀類のスチーム加工に関する研究のほとんどは米国で行われてきました。蒸気をあてる時間は小腸や全消化管における有機物、デンプン、窒素の消化率には影響しませんでした。穀類をスチームロール加工することでたんぱく質に包まれたデンプンの粒が露出し、酵素による分解を受けやすくなると考えられています。

 ロールの隙間を狭く設定したり、ゆっくり通過させたりすることでスチームフレーク加工やスチームロール加工による加工度が高くなり、カサが大きくなります。フレーク加工やロール加工のカサについては主にマイロで研究されてきましたが、トウモロコシ、大麦、えん麦、小麦のデータも揃っています。ロール加工、または粉砕した大麦のルーメン内でのデンプン消化率(87~90%)は同じ加工をしたとうもろこし(50~90%)やマイロ(42~89%)よりも高いものでした。スチームロール加工は大麦のデンプン消化率を上昇させましたが、小麦とえん麦ではその影響は小さいものでした。粉砕により飼料は粉っぽくなり、牛の飼料摂取量に影響を与えるかもしれません。これに対し、スチームロール加工ではわずかな粉しか出ません。

酪農コラム/「炭水化物3~飼料の加工とデンプンの消化(2)」

スチームフレーク加工
 スチームフレーク加工では、蒸気槽で穀類に一定時間(30~60分)スチームをあてて、2本のロールの間を通して薄いフレークにします。その後フレークを乾燥槽に移し余分な水分を除きます。最終製品における水分は夏の保管中のカビ発生に影響を与えることがあります。フレークが薄いほど、デンプンの粒を包む蛋白質の膜は壊され糊化されて、消化率は高くなります。

 トウモロコシとマイロではスチームフレーク加工により消化率は上がります。大麦、小麦、えん麦よりもトウモロコシとマイロは加工による消化率向上の度合いが大きく、さらにマイロはトウモロコシよりもその度合いが大きい飼料です。
ルーメン内の乾物消化率改善はスチームフレーク加工した飼料で確認されています。スチームロール加工よりもスチームフレーク加工したトウモロコシは嵩が大きくなります(0.30~0.38kg/リットル、24~30ポンド/ブッシェル)。見かけの全消化管における消化率と乳量はスチームロール加工よりもスチームフレーク加工のトウモロコシで高くなります。米国アリゾナ州で行われた研究ではトウモロコシとマイロの両方でロール加工よりもフレーク加工のほうが乳量、乳たんぱく質量、乳脂肪量、乳たんぱく質濃度が高くなり、特にトウモロコシよりもマイロの方が加工方法による差が大きくなりました。

 ドライロール加工よりもスチームフレーク加工によって乳量と乳成分が高くなることが報告されてきており、マイロでは9%の乳量と15%の乳たんぱく質量増加が報告されています。 全消化管におけるマイロの消化率は79%から96%に上昇し、ルーメンでの消化率は54%から78%に上昇しました。スチームフレーク加工することで、デンプンを消化する場所が小腸からルーメンにシフトしたことになります。

 ロール加工した大麦、小麦、えん麦をそれぞれ飼料の60%配合した乳牛の試験では、えん麦を給与した牛が最も乳量と乳脂肪が高く、小麦を給与された牛の乳たんぱく質が最も低い結果でした。マイロ、トウモロコシ、大麦、えん麦、小麦の加工度を高め、スチームフレーク加工やロール加工でカサを大きくすることで、フィードロットの肉牛の成績や乳牛の乳量が改善しました。

 加工度を高めすぎるとルーメン内でのデンプンの発酵が早くなりすぎるため、アシドーシスを起こしたり、飼料摂取量が低下したりします。フレークのカサを大きくし0.40kg/リットルから0.30kg/リットルにすると、下部消化管、全消化管の両方でデンプンの消化率が上昇しました。蒸気をあてる時間は小腸、全消化管におけるデンプン、有機物、窒素の消化に影響しませんでした。

 ドライロール加工に比べて、スチームフレーク加工ではデンプンの消化率はルーメン、小腸、全消化管のそれぞれで高くなりました。粗く砕いたトウモロコシに比べて、泌乳のための正味エネルギー(NEl)はスチームフレーク加工で18%、細かく粉砕すると6%高くなります。

酪農コラム/「炭水化物3~飼料の加工とデンプンの消化(2)」

酪農コラム/「炭水化物3~飼料の加工とデンプンの消化(2)」

(つづきます)