酪農コラム/蛋白質2~乳蛋白の合成(1)
コラム
はじめに
最適な蛋白質の給与は乳牛の生産性に大きな影響を与えます。しかし、過剰な蛋白質の給与はコストが増加し、生産性を低下させます、蛋白質を給与しすぎると体内に窒素が過剰に蓄積され、尿や糞で排泄されます(過剰な蛋白質はアンモニアや尿素に変換されます)。この時、余分な蛋白質を排泄するために、乳糖合成などに利用されるエネルギーも利用されてしまい、生産性が低下してしまいます。また、過剰な蛋白質は動物の健康や環境にも悪い影響を与えます。低蛋白質給与の場合は成長や生産性を低下させます。なぜなら、乾物摂取量、繊維消化率、繁殖に悪い影響を与えるからです。乳蛋白質は乳糖に比べ変動の幅が広く、飼料と飼養管理によって変動しやすい成分です。
乳タンパク質の合成
乳蛋白の合成は体内の他の蛋白質(筋肉・靭帯など)合成と似ています。乳腺で合成される蛋白質は、カゼイン、βラクトグロブリン、αラクトアルブミンおよび免疫グロブリンなどです。
蛋白質は様々なアミノ酸が結合して作られています(動物の蛋白質合成は植物の蛋白質合成と似ています。アミノ酸は一般的に必須と非必須アミノ酸に分けられます。これは体内で合成できるかどうかで分けられています。また必須アミノ酸は、急速な成長および高い生産性を行うために必要とされるものです。
乳蛋白質の濃度は、必要とされるアミノ酸に依存します。反芻動物は、ルーメン内で作られる微生物態蛋白質と、ルーメン内で分解されない飼料中の蛋白質(RUP)が主な蛋白資源になります。高泌乳の乳蛋白質合成においては、微生物態蛋白質から利用されるアミノ酸では足りなくなるため、RUP中のアミノ酸濃度が重要となります。なかでもメチオニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トレオニンは不足しやすく、この不足は濃厚飼料や粗飼料の種類によって変わります。例えば、とうもろこしや大豆をベースにした飼料の場合、リジンやメチオニンが不足すると言われています。またヨーロッパでは、グラスサイレージをベースにしたところではヒスチジンが不足すると言われています。乳脂肪と乳糖の材料が少なかった場合、アミノ酸を分解して糖分に変えて利用するため(糖新生)、乳蛋白の合成に影響を与える可能性があります。
カゼイン
カゼインはラテン語の“Caseus”を語源とした「チーズ」を意味します。カゼインはカルシウムやリンを豊富に含まれ、これが乳の色にも影響します。そのほか脂肪にも関係しており、低脂肪の乳は白くなりません。コレステロールは、乳を液体に維持するために必要です。
チーズを作るときや子牛にミルクを給与した時、カゼインは酵素(レンニン)によって固まります。混ぜ印に含まれるカルシウムはカード形成に影響を与えます。カゼインは乳酸の増加、酸(レモン汁など)でも固まります。カゼインが固まるとき乳脂肪も一緒に取り込まれます。
カード形成は、豆腐を作ることと似ています。豆腐を作るときに豆乳を70℃くらいに温めて、ニガリを加えるとカードが形成されます。ニガリはミネラル(塩化マグネシウム・塩化カルシウム・硫酸カルシウム)豊富に含まれており、最近ではグルコノデルタラクトンもニガリと一緒に加えられます。ニガリに含まれるミネラルは蛋白質と結合し、カード(豆腐)を形成します。
日本で実施された研究では、室温で調整された豆乳にレンニン(レンネット)を加えることで凝固物が出来ることを確認しています。ただし、乳にレンネットを加えるよりは、固まるのに時間がかかるようです。
カゼインはチーズの原料以外に、食品添加物、木や鉄の接着剤、糸の原料などとしても使用されます。また、カゼインは他の蛋白質と異なり、熱によって固まらない性質を持っています。
カゼインはカルシウムと結合しているため、乳量が急激に増加すると、カルシウムの乳汁への導入が増加します。この時、カルシウムの供給(飼料と骨)量が不足すると血中カルシウム濃度が低くなり、乳熱や他の病気につながる可能性があります。
(つづきます)