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タイセイ飼料株式会社

獣医/機能性飼料素材 (2)

––– 生菌製剤 –––
 機能性飼料素材の初回は、生菌製剤についてご紹介します。

 生菌製剤(または生菌剤)とは、WHO/FAOによると「動物に投与されることでその動物に健康上の利益をもたらす生きた微生物のこと」とされており(1)、畜産酪農分野においては疾病抑制・消化機能改善・成長促進などを目的に古くから利用されてきています(2)。

 ウシでは第一胃(ルーメン)という微生物や原虫の力を借りて飼料を発酵・分解・消化する器官の果たす役割が非常に大きいため、他の動物種に比べて「微生物をうまく利用することは家畜の健康増進・生産性向上に大きく貢献する」ということを実感されている関係者の方も多いと思います。つまり、必ずしも生菌製剤に頼るわけではなく、常に「ルーメンをはじめとした消化管内の微生物の働きを最大化するためにはどうすれば良いか?」を考えることが、結果的にウシの健康に繋がり、なおかつ生産性をアップさせることにも繋がっているケースは少なくありません。

 一方で、通常の飼料を食べるだけでは多くの量を消化管内に取り込めない「ウシにとって有益な微生物」は多数存在し、それら微生物を意図的に摂取することを目的に単離・精製・濃縮したものが「生菌製剤」になります。以下では具体的に「ウシに健康上の利益をもたらし、生産性を向上させる微生物」をその特徴とともにいくつか紹介したいと思います。


1.枯草菌
 枯草菌はBacillus subtilis(バチルス・サブチルス)という学名で、畜産酪農分野で広く利用されています。納豆菌(Bacillus subtilis natto)も枯草菌の一種です。

【特徴】
・胃ではなく腸で作用し酸素を消費して増える(=好気性菌)
→ そのため酸素を必要とする他の病原性細菌(大腸菌・サルモネラなど)が増殖しづらくなり、酸素がない環境で増えやすい有用細菌(乳酸菌・ビフィズス菌など)を増やす効果がある(3-5)

・子牛の出血性腸炎・肥育牛の突然死/悪性水腫・乳牛の出血性腸症候群に関与しているClostridium perfringensの増殖を抑制する(3, 6)

・腸管内に定着している細菌ではないため毎日の経口摂取が必要


2.乳酸産生菌
 乳酸を産生する、いわゆる「乳酸菌」と呼ばれる細菌群です。動物用として生菌製剤に利用されている代表的なものとしては主に以下の細菌群になります。

 ・Enterococcus spp.(エンテロコッカス属)
 ・Lactobacillus spp. (ラクトバチルス属)

 また、ビフィズス菌として知られるBifidobacterium spp.も乳酸(+酢酸)を産生する有用菌として、幾つかの生菌製剤に利用されています。

【特徴】
・主に腸で働き、糖を分解して乳酸を産生する。乳酸によって細菌周辺の腸内pHを酸性環境に保つことで、酸性環境を好まない病原性細菌・ウイルスの増殖を防ぐ(7)

・腸管内や粘膜上皮に存在する免疫細胞(主に樹状細胞)を刺激することで、全身性に炎症を抑制する(8,9)

・上記と同様に免疫応答を強化することで、ワクチンの効果を増強する可能性がある(8,9)


3.酵母菌
 Saccharomyces cerevisiae(サッカロマイセス・セルビジエ)として知られる酵母ですが、高い効果を発揮するのは「生きた酵母」と言われる活性型酵母になります。通常、活性型酵母は胞子の形で貯蔵され眠っている様な状態ですが、牛に給与するとルーメン内で出芽して増殖を始めます。

【特徴】
・主にルーメンで働き、増殖の際に酸素を消費することで周辺環境の嫌気度を高める
→ その結果、嫌気性環境で増殖が進む繊維分解菌や乳酸利用菌が増える

・繊維分解菌の増殖によってNDF消化率が向上する

・乳酸利用菌の増殖によってルーメン内の乳酸が効率的に利用されることでアシドーシス予防になると同時に、プロピオン酸が増加しメタン生成が減少する(10)

・消化効率が上がりアシドーシス予防になることから、暑熱対策として利用されることも多い

 以上、生菌製剤として利用されている有用細菌は他にもあるかと思いますが、ここでは代表的なものをご紹介しました。生菌製剤の中身はよくわからずどれも同じに見えることもありますが、それぞれの有用細菌の特徴を理解して利用できればコストを抑えつつ高い生産性を発揮できると思います。今回のコラムがその一助になれば嬉しいです。


*本稿執筆時点(2023年9月)で少なくとも複数の研究報告があり、その科学的根拠が確からしい内容についてのみ記載しています


― 参考文献―
(1)FAO/WHO. Exper consultation report. Cordoba, Argentina: Food and agriculture organization of the United Nations and World Health Orhanization; 2001. Evalution of health and nutritional properties of probiotics in food including powder milk with live lactic acid bacteria.
(2)Uyeno Y. et al., Effect of Probiotics/Prebiotics on cattle health and productivity, Microbes Environ. 2015, 30:126-132.
(3)Guo XH et al., Screening of Bacillus strains as potential probiotics and subsequent confirmation of the in vivo effectiveness of Bacillus subtilis MA139 in pigs. Antonie van Leeuwenhoek. 2006, 90:139–146.
(4)Lema M. et al., Reduction of fecal shedding of enterohemorrhagic Escherichia coli O157:H7 in lambs by feeding microbial feed supplement. Small Rumin Res. 2001, 39:31–39.
(5)Stephens TP et al., Reduction of Escherichia coli O157 and Salmonella in feces and on hides of feedlot cattle using various doses of a direct-fed microbial. J Food Prot. 2007, 70:2386–2391.
(6)Cull C et al., Efficacy of Two Probiotic Products Fed Daily to Reduce Clostridium perfringens-Based Adverse Health and Performance Effects in Dairy Calves. Antibiotics. 2022, 11(11):1513.
(7) 辨野義己. プロバイオティクスとして用いられる. 乳酸菌の分類と効能. モダンメディア. 2011, 57:277-287.
(8)Villena J et al., Regulation of Toll-Like Receptors-Mediated Inflammation by Immunobiotics in Bovine Intestinal Epitheliocytes: Role of Signaling Pathways and Negative Regulators. Front Immunol. 2014, 5:421.
(9)Kober AKMH et al., Immunomodulatory Effects of Probiotics: A Novel Preventive Approach for the Control of Bovine Mastitis. Microorganisms. 2022, 10:2255.
(10)浅沼ら, 乳酸利用の増強によるルーメンアシドーシスおよびメタン生成の抑制. 日本畜産学会報. 2004, 75 (4):543-550.