酪農コラム/視察などでよく質問される事について
コラム
みなさんこんにちは。
今月からは、視察に訪れた方などからよく質問される事について、私の考えや経験を交えて書かせて頂きます。特に根拠や裏付けが無いことも書くかもしれませんがご容赦ください。
それでは、今月のテーマは『冬期の保温と換気』についてです。
哺乳仔牛にとって冬は厳しい季節で皮下脂肪の少ない仔牛はとても寒さに弱いものです。
ミルクからのエネルギーが不足すると成長不良を起こし、免疫力低下も重なることで重篤な下痢症などに発展します。このような事にならないためにも仔牛を保温する事は大変重要です。
一般的に保温対策として行われるのは、カーフジャケットやネックウォーマーの着用、赤外線ヒーターの使用、敷料の増量などです。他にもシート等でペンを覆う、温風ボイラーやジェットヒーター等でペンまたは牛舎全体を温かくする方もおられると思います。
保温対策の注意点としては、暖かくしようとするとどうしても換気が不足してしまうことです。みなさんも保温と換気の二者択一を迫られているのではないでしょうか。
このような中で、カーフゲート(以下CG)で行っている対策をご紹介いたします。
①カーフジャケットの着用
CGでは厳冬期になると生後3週齢を過ぎるまで着用させています。単純に毎週30~40頭入牧するので、40×3=120枚以上は用意しています。一度購入してしまえばランニングコストは低いので必需品です。ジャケットはフリース素材で体への密着度が高いものを使用しています。サイズが合っていない場合や素材的に体とジャケットの間に空間ができてしまうジャケットは保温効果が低減してしまいます。また、CGは雌牛しかいないのでお腹の下(臍のあたり)もカバーできるジャケットです。一般的なジャケットは雄雌兼用で、どうしてもお腹のところが空いていますので気になっておられる方はジャケットを使い分けることも考えてみて下さい。
②エネルギーの増給
みなさんもご存知の通り、寒くなると夏場に比べて体を維持するために多くのエネルギーを必要とします。このエネルギーロス分を保温対策で小さくするわけですが、それだけでは北海道の冬は越せません。必ずエネルギー増給のために粉ミルクの変更(TDN↑)または粉体量の増加(濃度↑・給与ℓ↑)が必要です。厳冬期のCGでは更に中鎖脂肪酸(ネオドリンク)を10~20cc/日を入牧から2週間程度追加しています。目安はだいたい30ccで粉ミルク1ℓ分のエネルギーです。結局のところ、これらのエネルギー増給は飼養環境によって大きく変わるので仔牛の毛艶や活力などを見ながら増給量や期間を判断して下さい。
③日中の対策
冬場であっても日中は換気に重きをおきます。風上側のカーテン等はめったに開けませんが、風下側を開けて換気をします。しかし外気温より寒くなるような換気量にはしません。そして、仔牛を日光に当てることをお勧めします。なぜなら日光に当たることで、体感温度は上がりますし、夜間に強い寒冷感作を受けた筋肉や神経の緊張(ストレス)が取れて、また夜間のストレスに耐えられていると感じているからです。(ビタミン生成なども関与しているかもしれません)
晴れる日ほど夜間の冷え込みが強いので、逆に日中は日光の力を上手に活用しましょう。そのためには、屋根に採光部分を設けることやハッチやペンを南向きにするのが重要であり、ドーム型ハッチを屋内で使用されている方は2重に日光を遮っているので注意して下さい。基本的にドーム型ハッチは屋根のない屋外で使用して頂くのが良いと思います。
④夜間の対策
夜間はすきま風などの対処をしてなるべく保温に努めます。しかしながら単純に閉め切って保温をすると換気不足による肺炎のリスクが上昇しますので、アンモニア濃度が上がらないように床替え回数を増やすことや、夏場より1ペン当たりの頭数を減らす(過密にしない)といった事が必要になります。
私が夜間の換気量の目安にしている事は結露の発生具合です。日が昇り気温が上昇してくると天井からポタポタ落ちてくると思いますが、この量が多ければ換気量を増やし、少なければ換気量を減らすといった具合です。CGではカーテンのすかし幅やタイマー付き排出ファンの稼働時間を調整して対処しています。今年はロボット牛舎1棟に陽圧換気システムを導入したので活躍してくれる事を期待しています。
⑤その他
その他として預託元農家さんに改善して頂いた事案として、親牛牛舎(特につなぎ牛舎)の端のスペースなどで長く飼養しないで下さいと頼んだ事があります。つなぎ牛舎であれば温度的には問題ないことが多いですが、大気中・環境中の細菌やウイルスは仔牛にとって多すぎます。体が乾いてスムーズに起立ができ、元気に乳首を吸えるようになる3日目ぐらいには外のハッチに移動してもらったことで、入牧前後の下痢や肺炎が減少しました。
下痢や肺炎が心配で移動させないのではなく、親牛牛舎に長くいることで様々な細菌・ウイルス等に暴露されないようにしましょう。冬場の悪天候の中、屋外ハッチの管理作業は大変ですが、一度試して頂きたい方法です。