酪農コラム/脂肪の代謝2ー乳脂肪の合成(2)
コラム
季節要因
季節によって乳中の脂肪酸の含有量は変化します。ニュージーランドでの研究では、春と夏の放牧時期に乳中の不飽和脂肪酸が増えることが示されています。乳脂肪の硬さ(冬は硬いバターができる)はこの時期には緩和されます(夏は軟らかいバターができる)。同じような結果がフランスでも確認されています。スイスの研究では、標高が高い場所(1,500m以上)で放牧された牛の乳中には低い場所(1,200m以下)のものよりも不飽和脂肪酸が多いことが示されています。
動物側の要因(泌乳ステージ)
ニュージーランドの牛において泌乳初期(分娩後30日まで)の乳では、中期(120日)もしくは後期(210日)よりも短鎖脂肪酸(炭素数4~12)が少ないことがわかっています。この差は季節や飼料の影響ではなく、泌乳初期においては自らのエネルギー要求量を満たすだけの乾物摂取量を食べきれないことの影響によるものです。
ビタミン
乳房炎の症状が出ている牛では、程度は様々ですが乳量が減少し、乳たん白質と乳脂肪も低下します。
乳房炎
ナタネとアマニを給与されている牛にビタミンEを給与すると、脂肪が酸化されるのを抑えることができます。また、不飽和脂肪酸を給与したときに発生する乳脂肪の低下も抑えることができます。ナイアシンとビタミンB12は乳脂肪代謝に必須で、不足すると乳脂肪の合成に影響が生じます。特にストレスが強い状況ではこれらのビタミンが不足しがちです。
脂肪と繊維の消化
現在では牧場で乳牛に脂肪を給与することは一般的に行われています。脂肪を給与する際にはいくつか注意点があります。
1.摂取量の減少・・・・・乾物中6%以下の脂肪であれば摂取量に影響しませんが、それ以上だと摂取量が減少するかもしれません
2.繊維消化の抑制・・・・・不飽和脂肪酸(植物油脂)やルーメンバイパス脂肪を多量に給与すると、繊維を消化するルーメン微生物の活動を抑制してしまい、繊維の消化にマイナスの影響を与えます。脂肪が繊維に付着し包み込んでしまうために微生物の消化活動が抑制されるとする説を唱える人もいます。脂肪は疎水性で粒子状のものにくっつきます。ルーメン内の細菌の細胞壁は親水性で、イオン(親水性も疎水性も)が結合し離れにくくなります。また、いくつかの脂肪酸は繊維分解細菌にとって有毒かもしれません。脂肪を添加した飼料は繊維分解微生物には有害ですが、脂肪酸(18:1、オレイン酸)も増えています。
3.ミネラル要求量の上昇・・・・・脂肪を給与すると二価の陽イオン(カルシウムやマグネシウム)の吸収が低下します。脂肪がカルシウムやマグネシウムとけん化して(くっついて)ルーメン細菌が利用できないようにしてしまうからです。脂肪を給与する際にはこれらのミネラルの添加を増やすべきです(~20%)。
(つづきます)