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タイセイ飼料株式会社

酪農コラム/脂肪の代謝1ー乳脂肪の合成(1)

はじめに
 ほとんどの植物には脂肪はわずかに含まれる程度(1~4%)であるため、反すう動物の飼料に含まれる脂肪は非常に低いレベルであることが一般的です。豚用や鶏用の飼料では脂肪をより多く含みます(5~10%)。これは、動物の生理に合わせた適応の結果です。つまり、ルーメンは高いレベルの脂肪を含む飼料をうまく利用することができません。例外として、子牛には30%以上もの高い脂肪を含む飼料があります。

 脂肪は人間や動物の貯蔵エネルギー源であり、体重の17%ほどを占めます。また、乳にも高いレベルの脂肪が含まれます。乳量が30kgで乳脂肪が4%の牛では1日に1.2kgの脂肪を分泌していることになります。それでは、摂取する脂肪の量は少ないのに、牛はどのようにしてこれほどたくさんの脂肪を作って貯蔵したり乳に分泌したりしているのでしょうか。その秘密はルーメンにおいて脂肪だけでなく繊維から得られる発酵産物を変化させて体脂肪や乳脂肪を合成する反すう動物の能力にあります。

酪農コラム/脂肪の代謝1ー乳脂肪の合成(1)

 生物において、脂肪は様々な働きをします。栄養素(脂溶性のビタミン)の運搬、芳香(乳や肉)、繁殖(ホルモン)、皮膚と毛の健康、体温の維持などです。脂肪組織(皮下脂肪)は幼齢動物を寒冷から守る働きをします。また、蛋白質(アミノ酸)と比べて脂肪(脂肪酸)は小腸で吸収される際に必要なエネルギーが少なく、このため、ヒートストレス下においては脂肪の方が体温の上昇を抑える効果があります。

酪農コラム/脂肪の代謝1ー乳脂肪の合成(1)

 脂肪(Fat)、油(Oil)、脂質(Lipid)はよく混同されます。脂質は広い意味で脂肪、油、リン脂質、ステロイド、脂肪ではない物質(植物の色素、クロロフィル、キサントフィル、ワックス)を含みます。わかりやすく説明するために、ここでは脂肪という単語を使います。脂肪と油は同意語のように使われますが、やや意味が異なります。室温(25℃)において脂肪は固体ですが、油は液体です。その違いは含まれる脂肪酸の組成によるものです。固体の脂肪(牛脂などの硬い脂肪)に含まれるのは大部分が飽和脂肪酸です。油(コーン油や魚油)にはより多くの不飽和脂肪酸が含まれています。飽和と不飽和のミックスとなっているもの(ラードなどの軟らかい脂肪)もあります。脂肪は水に溶けません。脂肪は炭水化物と同じ構成要素でできていますが、含まれる酸素は炭水化物よりもずっと低い割合です。脂肪は同じ重量の炭水化物の2.25倍、たん白質の1.8倍のエネルギーを持っています。

酪農コラム/脂肪の代謝1ー乳脂肪の合成(1)

 脂肪の分析は170年以上前にドイツで発明された抽出法(extraction method)を用い、抽出されたエーテルをEE(Ether Extract)、「粗脂肪」と呼びます。粗脂肪の分析は現在でも一般に利用されていますが、やや難点があります。分析結果の数値は脂肪酸の量を正しく示しておらず、脂肪以外の物質を一部含んでいます。穀類や粗飼料に含まれる粗脂肪の割合は様々です。穀類に比べて、粗飼料に含まれる粗脂肪には脂肪ではない部分が多いため、評価を誤りがちです。最近は新しい分析方法により脂肪酸の正確な量を測定することができます(表3)。

酪農コラム/脂肪の代謝1ー乳脂肪の合成(1)

(つづきます)